ドル40%増刷でも変わらない2100万枚|鍵を持たない保有の盲点

2020年から2021年にかけて、あなたの財布に入っているドルは、知らない間に薄まっていました。米連邦準備制度(Fed)が歴史的な規模の量的緩和を実施し、M2マネーサプライはわずか2年で約40%増加しました。単純に言えば、流通するドルの量が1.4倍になった。同じ枚数のドルを持ち続けていた人の購買力は、それだけ希釈されたことになります。

この「希釈」がなぜ起きるのかは、仕組みを知れば単純です。政府や中央銀行は、政策判断ひとつで通貨を増刷できます。誰の同意も必要なく、法的な上限もない。財政出動が必要になれば刷ればいい。その分、既存保有者の通貨の価値が薄まる。これが現代の法定通貨の構造的な問題です。

2100万枚という「変えられない事実」

ビットコインには上限があります。2100万枚。この先、1枚も増えることはない。

これはルールではなく、プロトコルに刻まれた数学的な事実です。どの国の政府も、中央銀行も、開発者も、誰一人としてこの数字を変えることはできません。増刷しようとする動きがビットコインの歴史の中で何度かありましたが、ネットワークはことごとく拒絶してきました。2017年のブロックサイズ戦争がその象徴です。多くの企業やマイナーが集まって「ルールを変えよう」と動いたとき、ユーザーたちは自分たちのノードで静かに拒否した。コードが政治に勝った瞬間でした。

この性質こそが、法定通貨との根本的な違いです。円もドルも、発行体の判断次第でいくらでも増える。ビットコインは、そうではない。

「持っている」ことと「守られている」ことは別の話

ただし、ここで一つ問いかけたいことがあります。あなたは今、ビットコインを「持っている」のでしょうか。それとも「取引所に残高がある」状態でしょうか。

この二つは、見た目は似ていても、まったく異なる状態です。

取引所に預けたビットコインの秘密鍵は、あなたの手にありません。秘密鍵とは、ビットコインネットワーク上で資産を動かす権限そのものです。それを持っていないということは、2100万枚という上限がもたらす希少性の恩恵を、直接受け取れていないということでもあります。

取引所が何らかの理由でサービスを停止した場合、あるいは経営が悪化した場合、あなたのビットコインを引き出せなくなるリスクがあります。FTXの破綻では、世界中の数十万人の顧客が長期間にわたって資産へのアクセスを失いました。マウントゴックスの件では、破綻から10年以上が経過した2024年になってようやく一部の返還が始まったほどです。「法的には分別管理されているから大丈夫」という考え方は、破綻処理の長期化や手続きの複雑さの前では十分な安心材料にはなりません。

2100万枚の恩恵を受け取るために必要なこと

ビットコインが法定通貨に対して優位性を持つのは、増刷できないからです。しかしその恩恵を本当に享受できるのは、秘密鍵を自分で管理しているときだけです。

取引所の残高はあくまで「取引所があなたのBTCを保管している」という状態です。そのシステムが止まれば、アクセスできない。それはドルを銀行に預けていることと、構造的には近い関係です。ビットコインにはしかし、セルフカストディという選択肢が存在します。

ハードウェアウォレットを使えば、インターネットから切り離された環境で秘密鍵を生成・保管できます。その鍵があなたの手にある限り、誰もあなたのビットコインを動かすことはできません。取引所が閉鎖しても、規制が変わっても、サービスがダウンしても、無関係です。

注意すべきは、デバイスを公式サイト以外から購入しないこと、そしてシードフレーズ(12〜24語の復元フレーズ)を紙や金属プレートに安全に保管することです。このシードフレーズが失われると、そのビットコインは永遠に取り出せなくなります。管理には責任が伴います。

希釈される通貨と、されない通貨

ドルが40%増えた2年間、ビットコインは1枚も増えませんでした。この対比は今後も続きます。法定通貨の発行を止める仕組みはなく、財政ニーズが生じるたびに通貨は増え続ける。一方、ビットコインのプロトコルは淡々と動き続け、上限2100万枚を守り続けます。

その恩恵を受け取るかどうかは、秘密鍵をどこに置くかで決まります。

取引所の残高を眺めているだけでは、ビットコインの本質的な価値にまだアクセスできていないかもしれません。ハードウェアウォレットへの移行を、今日から検討してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

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