FRBが準備率をゼロにした日|部分準備銀行制度とBTCの設計原理
銀行口座に入れたお金は、完全な形で銀行の金庫に保管されているわけではありません。これは陰謀論の話ではなく、金融制度の根幹にある仕組みです。そしてその仕組みが、2020年に一つの転換点を迎えました。
2020年3月26日、FRB(米連邦準備制度理事会)は銀行の法定準備率を0%に引き下げました。以前は預金残高の一定割合を準備金として保持する義務がありましたが、その義務を事実上なくしたのです。表向きの理由はコロナ禍における緊急措置でしたが、この決定は「銀行はゼロでも準備金を置けばよい」という状態を正式に認めるものでした。
預金とは何か、を問い直す
部分準備銀行制度(Fractional Reserve Banking)とは、銀行が預かった預金の一部だけを手元に置き、残りを貸し出す仕組みです。100万円を預けると、銀行はその大部分を企業や個人への融資に回し、利息を得ます。これが数百年にわたる銀行ビジネスの基本モデルです。
問題は、すべての預金者が同時に引き出しを求めた場合、銀行はそれに応じられないという点です。1930年代のアメリカで発生した銀行取り付け騒ぎはその典型例であり、連鎖的な破綻を生みました。その教訓から預金保護制度(FDICなど)が生まれましたが、本質的な構造は変わっていません。「銀行を信頼し、国家が保証する」という信頼の連鎖に依存したままです。
準備率を0%にするという決定は、ある意味でこの矛盾を正直に認めたものとも言えます。あなたの預金は「保管されている」のではなく、銀行に「貸し出されている」という現実です。
ジェネシスブロックに刻まれた動機
2009年1月3日、ビットコインの最初のブロックには、イギリスのタイムズ紙の見出しが刻まれていました。
「Chancellor on brink of second bailout for banks(財務大臣、銀行への2度目の救済措置を検討)」
2008年のリーマン・ショック後、各国政府は税金を使って銀行を救済しました。その一方で、普通の市民は住宅を失い、雇用を失いました。ビットコインはこの文脈の中で生まれた技術です。
2100万枚という発行上限は、コードに書かれた数学的なルールです。FRBが準備率を0%に引き下げたような一機関の意思決定では変更できません。変更するには、世界中に分散したノードとマイナーの合意が必要であり、事実上それは不可能に近い。この「変更困難性」こそが、ビットコインの設計上の核心の一つです。
取引所保管は別のリスクを生む
ビットコインを購入したとしても、取引所のウォレットに置いている限り、秘密鍵はあなたの手元にありません。秘密鍵を管理するのは取引所です。
日本の法律では、取引所には顧客資産の分別管理義務があります。法的な意味では、あなたの資産はあなたのものです。しかし、取引所で何らかの問題が発生した場合、実際にアクセスできるかどうかは別の話になります。
2022年に経営破綻したFTXでは、顧客資産が内部で流用されており、破綻時点で約80億ドル相当の顧客資産が返還不能な状態に陥りました。これはアメリカの事例ですが、日本でもDMM Bitcoinの事案では、事件発生後に出金が数ヶ月間停止されました。「法的に保護されている」と「今すぐ動かせる」は、同じことを意味しません。
取引所に預けた状態は、銀行の部分準備制度とは仕組みが異なります。しかし「自分で管理していない資産は、何かが起きたとき動かせないリスクがある」という構造的な性質は共通しています。
鍵を持つことの意味
ハードウェアウォレットを使って自分で秘密鍵を管理することは、「取引所や第三者の状況に関わらず、自分のビットコインにアクセスできる状態を保つ」ことです。
銀行預金は信頼の連鎖に依存しています。あなたが銀行を信頼し、銀行が中央銀行を信頼し、中央銀行が政府を信頼する。FRBが準備率を0%にできるのは、この連鎖の頂点に立つ機関だからです。ビットコインの設計はその連鎖を数学的なルールで代替しようとするものです。
しかしそれが機能するのは、秘密鍵をあなた自身が管理しているときだけです。取引所に預けた瞬間、あなたは再び「誰かを信頼する」という構造の中に入ることになります。
あなたのビットコインが今どこにあるか、一度確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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