LUNAが数日で消えた理由|担保ゼロが作った400億ドルの幻
「担保がなくても1ドルを維持できる」と聞いたとき、あなたはどう感じましたか?
2022年5月、その言葉を信じた世界中の投資家たちが、数日のうちに資産のほぼすべてを失いました。TerraUSDとLUNA——アルゴリズムだけで1ドルペッグを維持すると謳ったプロジェクトの崩壊です。暗号資産の歴史において、これほど急速に、これほど大規模な損失が生じた事例はほかにありません。
アルゴリズムが1ドルを「作る」という設計
TerraUSD(UST)は金もドルも現物資産も持っていませんでした。1USTの価値を維持する仕組みは、同エコシステムのLUNAトークンとの交換メカニズムだけでした。
1USTが1ドルを下回ると、USTをLUNAに交換して需給を調整する——これが「アルゴリズム型ステーブルコイン」の設計です。数式と自動売買がペッグを守る、というわけです。
しかし考えてみてください。1ドルの裏付けになっているのが「また別のトークン」なら、そのトークン自体の価値が失われたとき、どうなるのでしょうか。
デススパイラルが始まった日
2022年5月7日、大規模なUST売りが始まりました。USTのペッグが崩れ始めると、維持のためにLUNAが大量発行されました。するとLUNA自体が希薄化し、価格が下落します。LUNAが下がればUSTの担保価値も下がり、さらにUSTが売られる——。
この連鎖を「デススパイラル」と呼びます。崩壊が崩壊を呼ぶ構造が、最初から設計に内包されていたのです。
LUNAの価格は119ドルから0.0001ドル以下へ。下落率は99.9%以上。わずか数日の出来事でした。推定400億ドルを超える資産が消えたとされ、保有者のもとに戻ってきたものはほぼゼロでした。崩壊の過程でLUNAの発行枚数は数兆枚規模まで膨れ上がりました。希薄化の速度は人間の直感を超えていました。
アルゴリズムは「信頼」を作れない
なぜこれほど急速に崩壊したのか。答えはシンプルです。信頼の土台がなかったからです。
通常の担保型ステーブルコインは、1ドル相当のドルや米国債などを実際に保有しています。批判の余地はあっても、少なくとも現実の資産が裏付けとしてある。ところがUSTには何もありませんでした。
「数学が保証する」と言いましたが、数学は価値を生みません。数学はルールを記述するだけです。そのルールが現実の資産に紐づいていなければ、信頼が消えた瞬間に崩れます。アルゴリズムで作られた価値はアルゴリズムで消える——LUNAはこの事実を400億ドル規模の損失として証明しました。
ビットコインとの根本的な違い
ここで立ち止まって考えてほしいことがあります。ビットコインはなぜ存在しているのか、ということです。
ビットコインの1枚1枚には、マイナーが費やした電力と計算コストが伴います。新しいビットコインを発行するには、現実世界でエネルギーを消費しなければなりません。これがProof of Work(PoW)の本質です。コストという現実の裏付けがあります。
そして発行上限は2100万枚。これはコードで定められた数学的な確定事項であり、誰かの意思決定で変更できるものではありません。LUNAのように「維持のために必要なら増刷する」という設計とは、根本が異なります。希少性とは「増やせない」という制約から生まれるものです。
LUNAが崩壊した理由は、技術が未熟だったからではありません。「アルゴリズムで価値を作れる」という前提そのものが誤りだったのです。
取引所で買ったアルトコインに潜む二重リスク
LUNAの崩壊で多くの人が被った損失は、プロジェクトの設計欠陥だけが原因ではありません。「よくわからないまま取引所で買った」という管理上の問題も重なっています。
取引所に預けている資産の秘密鍵は、あなたが持っていません。取引所側が管理しており、取引所が何らかの問題を起こせば出金できなくなるリスクがあります。これは所有権の話ではなく、アクセス権・管理権の問題です。
LUNAが崩壊したとき、多くの取引所でLUNA/USTの取引が停止され、保有者は売るタイミングすら奪われました。アルトコインのリスクと取引所管理のリスクが同時に顕在化した瞬間でした。
設計の嘘は、いつか現実に回収される
「革新的な仕組み」「アルゴリズムが解決する」——こういった言葉には要注意です。現実の資産に紐づかない価値は、信頼が消えた瞬間に同時に消えます。LUNA/USTはその事実を、歴史上最大規模の暗号資産崩壊として証明しました。
ビットコインを保有するなら、その管理は自分の手元で行うことが基本です。ハードウォレットを用意し、秘密鍵を自分で管理する。それだけで、取引所のアクセスリスクとアルゴリズムの嘘から同時に距離を置けます。
まだセルフカストディを始めていない方は、今日が始め時です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。
LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします