手数料と事前配布で負け確定|ミームコイン期待値の数学

「ミームコインで10倍になった」という話を、SNSで見かけたことがあるかもしれない。実際に利益を出した人はいる。しかしその利益は、空から降ってきたわけではない。誰かが10倍の利益を得たということは、その分を失った人が必ず別にいる。そして驚くべきことに、参加者全員の損益を合計すると、数学的に必ずマイナスになる構造がそこにはある。

なぜ全員が勝てないのか

売買取引が成立するたびに、取引所やブロックチェーンのネットワークに手数料が支払われる。これはミームコインに限らず、あらゆる取引市場に共通することだ。

この手数料の存在が、参加者全体にとって重大な意味を持つ。仮に市場全体で1億円の売買が行われ、平均手数料が0.5%とすると、1日で50万円が参加者の外側へ流出する。参加者が全員で奪い合っている総資金が、日々その分ずつ目減りしていく計算だ。

これを経済学では「マイナスサムゲーム」という。全員の損益の合計がゼロになる「ゼロサムゲーム」よりもさらに不利な構造で、手数料の分だけ損失の合計が利益の合計を上回る。参加者全体の期待値は、参加し続けるほどマイナスに傾いていく。

内部者が先取りする「見えない取り分」

手数料だけではない。ミームコインの構造にはもう一つ、より深刻な問題が埋め込まれている。それが事前配布(プレマイン)だ。

多くのミームコインでは、一般販売が始まる前に、創設者や初期関係者がトークンを無料または極めて安価に受け取っている。彼らはほとんど資金を投じていないにもかかわらず、価格が上昇したタイミングで売り抜けることができる。

仮に総供給量の15%が内部者に事前配布されていたとする。一般参加者が合計1億円を投入しても、最初から1500万円分は内部者の利益として確定しているようなものだ。これは明示されたコストではなく、構造として組み込まれた「見えない初期取り分」だ。手数料と合算すれば、一般参加者が実質的に負担する損失はさらに大きくなる。

価格の急騰は「出口」の合図だ

ミームコインが急騰するとき、多くの人が「まだ上がるかもしれない」と感じて買いに入る。しかしその資金の流入こそ、事前にトークンを保有していた人たちが売り抜けるための出口を作っている。

新規参加者の買い注文が価格を支え、その間に内部者やごく初期からいた保有者がポジションを解消する。買い支える資金が尽きたとき、価格は急落する。この一連の動きは「ポンプ&ダンプ」と呼ばれ、ミームコイン市場では何度も繰り返されてきたパターンだ。

「あのコインで大きく儲けた」という話がSNSに残るのは、損失を抱えた人が黙って去るからだ。結果が良かった少数の声が可視化される「生存者バイアス」が、ミームコインの成功体験を実態より大きく見せている。期待値の計算は変わらない。

ビットコインが構造的に異なる理由

ビットコインにはプレマインが存在しない。2009年1月にジェネシスブロックが生成されて以来、採掘者は誰でも同じルールのもとでビットコインを得ることができた。創設者とされるサトシ・ナカモトも例外ではなく、電力とハードウェアを投じた採掘の対価として報酬を受けていた。

総供給量は2100万枚に固定されており、特定の誰かが勝手に増やすことはできない。発行ルールはプロトコルに書き込まれており、開発者や企業が変更できる権限を持っていない。参加者全員が同じルールのもとに置かれているという点で、ミームコインの構造とは根本から異なる。

ただし、ビットコインの設計が公平であっても、その管理を他者に委ねていれば話は変わってくる。取引所にビットコインを預けている状態では、取引所の経営問題・システム障害・規制対応などによって、引き出せなくなるリスクが生じる。「ビットコインを保有している」とは、秘密鍵を自分の手で管理していることを指す。取引所に置いたままの状態は、ビットコインへのアクセス権を取引所に預けている状態にすぎない。

公平な設計を、自分の手で守る

マイナスサムゲームに資金を投じ続けることと、プレマインゼロの資産を取引所に預けたままにしておくことは、向いている方向が同じだ。自分の資産の行方を、他者の判断に委ねているという点で。

ビットコインが持つ構造的な公平性は、秘密鍵を自分で管理して初めて、自分にとって意味のあるものになる。まだハードウェアウォレットへの移行を始めていないなら、今日がその一歩を踏み出すタイミングだ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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