Celsius47億凍結が示すオンチェーンBTCの現実

あなたが取引所に預けているビットコイン、ブロックチェーン上で確認できますか?

取引所のアプリを開けば残高は表示されます。「0.1 BTC」「0.5 BTC」——その数字を疑ったことはないでしょうか。表示されているからといって、それがブロックチェーン上に存在するとは限りません。

Celsiusが止めた日

2022年6月、暗号資産レンディングプラットフォーム「Celsius Network」が突然、全顧客の出金・送金・スワップを停止しました。凍結された資産は約47億ドル相当。日本円にして当時6,000億円を超える規模です。

翌朝も、1週間後も、1ヶ月後も、顧客は自分のBTCにアクセスできませんでした。その後Celsiusは破産申請へと進み、法的手続きが長引いた末、多くの顧客が資産の一部しか戻らなかった——これが現実に起きた出来事です。

ブロックチェーンを確認してみる

では、Celsiusが管理していたBTCはどこにあったのか。答えはブロックチェーン上に記録されています。

ブロックエクスプローラーを使えば、Celsiusが管理していたアドレスに大量のBTCが記録されていることを確認できます。しかしそのアドレスの保有者として刻まれているのは、あなたの名前ではありません。

ビットコインのブロックチェーンに「名前」という概念はなく、あるのはアドレスと残高だけです。そのアドレスに対応する秘密鍵を持つ者だけが、BTCを動かす権限を持ちます。Celsius顧客のBTCは、Celsiusが管理するアドレスに記録されていた——すなわち、秘密鍵はCelsiusが握っていた。

出金停止が宣告された瞬間、顧客はBTCにアクセスする手段を完全に失いました。

2100万枚は検証できる。しかし台帳の数字は違う

ビットコインの総発行枚数は2100万枚を超えることがありません。これは誰でも検証できます。フルノードを立ち上げれば、すべてのトランザクションを自分で確認できる。数学的な裏付けがあり、改ざんは事実上不可能です。

しかし取引所のアプリに表示される「あなたの0.1 BTC」は、取引所の内部データベース上の数字です。ブロックチェーンに直接記録されているわけではありません。

取引所は顧客から預かった資産を一括管理することが多く、個々の顧客のBTCがブロックチェーン上の特定アドレスに対応しているわけではないのです。日本では資金決済法により取引所に分別管理が義務付けられており、法律上は顧客の資産として保護されています。しかし法律が機能するのは、正常な状態のときだけです。

Celsiusが出金を停止した瞬間、顧客が頼れたのは法律の条文でした——ブロックチェーンの暗号数学ではなく。

「ペーパービットコイン」という構造

金融の世界には「ペーパーゴールド」という言葉があります。実物の金が存在せず、帳簿上だけに記録された金のことです。ETFや先物取引で金に投資する際、実際には現物を保有していないケースがあります。

取引所に預けたBTCも、構造的には似た問題をはらんでいます。ブロックチェーン上に「あなたのBTC」として記録されていない状態では、秘密鍵を持つ取引所に何かあったとき、引き出す手段がなくなる。Celsiusはその現実を、47億ドルという規模で世界に見せました。

FTXの破綻もしかり、マウントゴックスもしかり。事件が起きるたびに同じ構造が露わになります。平時は問題ない。しかし有事になると、秘密鍵を持っていない者は法的手続きの列に並ぶだけです。

セルフカストディが意味すること

自分でビットコインを管理するとは、ブロックチェーン上のアドレスに対応する秘密鍵を自分で保有することです。

ハードウォレットにシードフレーズを保管し、自分で署名して送金できる状態にあれば、取引所が破綻しようと出金を停止しようと、法的手続きに入ろうと関係ありません。あなたのBTCは、ブロックチェーンに記録されたあなたのアドレスに厳然と存在します。

「ブロックチェーンに名前がない」という事実は、セルフカストディにおいては強みになります。あなたのアドレスを知っている者は誰でも残高を確認できますが、そのBTCを動かせるのは秘密鍵を持つあなただけです。

取引所に「信頼」を預けるのか、数学的な検証に「信頼」を置くのか——ビットコインは最初からその選択を設計に組み込んでいます。


2022年のCelsius顧客が直面した現実は、特別なものではありませんでした。BTCを取引所に預け、秘密鍵を持っていなかった——それだけのことが、何億円という損失に変わった。

あなたのBTCが今夜もブロックチェーン上に存在することを確認する方法は、一つだけです。秘密鍵を、自分で持つことです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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