ノードを持たない者は傍観者|SegWit2x封じた投票権の実態
あなたのビットコインが、誰かの手でルールを書き換えられようとした日がありました。
2017年、ビットコインは静かに、しかし決定的な岐路に立たされました。大手取引所58社と全ハッシュレートの約85%を握るマイナーたちが連名で、ブロックサイズを2倍に拡張する「SegWit2x」の導入を強行しようとしました。署名した企業の名前を見れば、当時の業界の実力者がほぼ全員含まれていました。数字だけ見れば、圧倒的な「多数派」がビットコインを変えようとしていた瞬間でした。
しかし、変更は阻止されました。
誰が止めたのか
ハッシュレートでも、企業の資本力でもありません。世界中に散らばった、名もないフルノード運用者たちです。
ビットコインネットワークは、フルノードがトランザクションとブロックを独立に検証することで成立しています。フルノードとは、ビットコインの全ブロックチェーンを自前でダウンロードし、ルール通りかどうかを自分で判定するソフトウェアです。第三者を信頼せず、プログラムに書かれたルールを自分で適用します。
このフルノード運用者たちが、SegWit2xのアップデートを一斉に拒否しました。
ビットコインのコンセンサスの仕組みを理解すれば、これがなぜ有効な抵抗になるかがわかります。マイナーがどれだけ大きなブロックを採掘しても、フルノードがそのブロックを無効と判定すれば、そのブロックはネットワークで採用されません。ハッシュレートの多さは、フルノードを持つ者の判断を覆す力を持ちません。2017年11月、SegWit2xは中止に追い込まれました。
取引所ホルダーが気づかない事実
ここで重要な問いがあります。あなたは取引所にビットコインを保管しているでしょうか。もしそうなら、あなたはこの戦いに参加できなかったことになります。
取引所がどちらを選ぶかは、あなたの意思とは無関係に決まります。取引所がSegWit2xを採用すると決めれば、あなたのビットコインはSegWit2xルールで動くネットワーク上に存在することになります。自分でフルノードを運用していなければ、どのルールが本物のビットコインかを自分で判定する手段を持ちません。
秘密鍵を持たない者は、資産のアクセス権を取引所に委ねています。これに加えて、フルノードを持たない者は、ルール決定への参加権も委ねていることになります。2017年の戦いで取引所に預けていたホルダーは、ビットコインを保有しながら、その歴史的な戦いの観客席にいるしかありませんでした。
ビットコインの「民主主義」とは何か
ビットコインにおける意思決定は、資本の多さや企業の知名度では決まりません。フルノードを実際に動かしている者が、ルールを適用する者です。
これは国家の法律における裁判所の役割に近いと言えます。どれだけ多くの議員が法律の改正に賛成しても、裁判所がそれを適用しなければ現場では変わりません。ビットコインのフルノードは、ネットワーク上の「裁判所」として機能します。85%のハッシュレートが支持したという事実も、フルノードが拒否した瞬間に意味を失いました。
この構造こそが、ビットコインが特定の組織や企業に支配されない理由の一つです。誰でも、ルールを守る限りにおいて参加できます。そして誰でも、フルノードを動かすことでルールの守護者になれます。
フルノード運用は現実的な選択肢
「フルノードの運用は技術的に難しい」と感じるかもしれません。しかし現実には、Raspberry PiとSSDがあれば数万円以下で構築できます。Bitcoin Coreをインストールし、数日かけて全ブロックチェーンをダウンロードすれば、あなたのノードがネットワークに参加し始めます。UmbrelやmyNodeといったユーザーフレンドリーなディストリビューションを使えば、コマンドライン操作なしでも構築できます。
フルノードを持つことの利点はガバナンスへの参加だけではありません。自分のトランザクションを外部サービスに依存せず検証できます。ライトウォレットで残高を確認するたびに、接続先のサーバーにIPアドレスと保有アドレスを送信するリスクがあります。フルノードなら、その情報を外部に渡さずに済みます。秘密鍵を管理しながらフルノードも動かす構成が、ビットコインの本来の設計思想に最も近い参加の形です。
次の戦いのとき、あなたはどこにいるか
2017年の戦いから8年が経ちました。ビットコインのプロトコルは、あの戦いで守られた形のまま動き続けています。
次にルール変更の試みが起きたとき、参加者でいるか傍観者でいるかは、今の準備で決まります。秘密鍵を持ち、フルノードを動かすことが、ビットコインの真の参加者になる条件です。
まずは、フルノードの構築方法を調べることから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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