Samourai逮捕が示すBTCプライバシーの現実|選択権は鍵の持ち主にある

2024年4月、2人の技術者がニューヨークで逮捕された。彼らの「罪」は、ビットコインのプライバシーを守るウォレットを開発・運営したことだった。

Samourai Walletの創設者2人は、米司法省(DOJ)によって約20億ドル分のBTC取引を処理したとして訴追された。容疑はマネーロンダリング共謀と無登録マネー送信業者の運営。問題とされた技術は「Whirlpool」——CoinJoinと呼ばれるプライバシー強化機能を実装したツールだ。起訴されたのは不正に使ったユーザーではなく、ツールを作った技術者たちだった。

Whirlpoolが消えた理由

ビットコインの全取引はブロックチェーンという公開台帳に永続的に記録される。送金額・送金先・タイミングはすべて公開情報だ。取引所でBTCを購入すれば、KYC(本人確認)手続きで身元と受け取りアドレスが紐づく。そのアドレスから送金した先も、さらにその先も、Chainalysisのようなブロックチェーン分析ツールで追跡できる。

CoinJoinは、複数ユーザーのBTCを一つのトランザクションにまとめることで、「誰が誰に送ったか」を判別しにくくする技術だ。Whirlpoolはその処理を自動化し、一般ユーザーが使いやすい形で提供した。

しかし2024年、DOJはWhirlpoolを「犯罪インフラ」と位置づけた。技術者は逮捕され、サービスは停止を余儀なくされた。プライバシーを守るための技術が、存在そのものを問われる時代になった。

取引所ユーザーには選択権がない

ここで重要な事実がある。取引所にBTCを預けているユーザーには、そもそもプライバシーを守るか否かを選ぶ権利がない。

取引所ウォレットでCoinJoinは使えない。どのアドレスを使うか、トランザクションをどう組むか——これらは取引所が決める。ユーザーができるのは、送金ボタンを押すことだけだ。プライバシー技術が合法であれ違法であれ、選択肢の外に置かれた状態に変わりはない。

Samourai事件の判決がどうなろうと、取引所ユーザーの状況は変わらない。秘密鍵を持たない限り、プライバシーに関する議論は常に他人事になる。

開発者が逮捕されることの意味

今回の事件が示した最も深刻な問題は、プライバシー技術の開発者が法的標的になりうるという前例が生まれたことだ。

この動きを受けて、いくつかのプライバシーウォレットやミキシングサービスが活動を停止・縮小している。ユーザーが選べる技術の選択肢は静かに減り続けている。今使えるツールが1年後も使えるとは限らない。選択肢が消える前に、自分で管理する環境を作っておくことが現実的な対応になる。

セルフカストディが前提条件になる理由

セルフカストディとは、秘密鍵を自分で保管し、自分のウォレットからトランザクションを発行することだ。CoinJoinを使うかどうかも、どのアドレスにBTCを配置するかも、いつ送金するかも——すべての判断が自分の手に戻る。

プライバシー技術を必ず使わなければならないわけではない。状況や必要性によって判断は変わる。しかし、その判断を「できる」状態に置くためには、秘密鍵を持っていることが前提条件だ。

取引所にBTCを預けたまま、技術者の逮捕や規制の動向を見守るだけでは、自分のプライバシーに関するすべての選択は他者の手に委ねられたままになる。

今、まず動くこと

ハードウォレットを入手し、取引所に置いているBTCを自分のアドレスに移すことから始めてほしい。それだけで、プライバシーに関するあらゆる選択の扉が開く。

Samourai事件はまだ法廷で争われている。しかし判決を待ちながら、自分の資産管理を他者に委ね続けることは、リスクを積み上げるだけだ。プライバシーを守るかどうかより先に、守る選択ができる状態を確保することが最初の一歩になる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします
← 記事一覧に戻る
LINE登録 ▶ セルフカストディの始め方を無料で学ぶ