最初の送金で全損しない|ハードウォレット液晶確認と3手順

取引所のアプリを開き、ハードウォレットで受信アドレスを表示した。そのアドレスをコピーし、送金額を入力して確認ボタンを押した。数秒後、取引所の残高は消えた。しかし、ハードウォレットには何も届かなかった。

ビットコインの送金には取り消し機能が存在しない。銀行振込であれば、誤送金のあと受取人の同意があれば返金できることがある。しかしビットコインのプロトコルには「送金を止める手段」も「返金を求める相手」も存在しない。アドレスが間違っていれば、そのBTCは二度と戻らない。

アドレスは26〜62文字の英数字の羅列だ

ビットコインのアドレスはbc1qar0srrr7xfkvy5l643lydnw9re59gtzzwf5mdqのような形式をしている。26〜62文字の英数字で構成され、1文字でも違えば別のアドレスになる。そして、この「1文字の違い」は画面を見ているだけでは気づきにくい。

しかしそれよりも日常的なリスクが、コピー&ペーストの段階に潜んでいる。

PC上でアドレスをコピーした瞬間に、クリップボードの内容を書き換えるマルウェアが存在する。感染していると、貼り付け後に確認した画面にはすでに攻撃者のアドレスが表示されている。確認したつもりが、確認になっていない状態だ。

ハードウォレットに液晶画面が搭載されている理由の一つはここにある。ハードウォレット内部で生成された受信アドレスは、デバイスの液晶にのみ表示される。PCからの情報が入り込む経路がなく、外部から書き換えられる余地がない。PC画面のアドレスと、ハードウォレットの液晶に表示されているアドレスを「両方」照合することで初めて、送金先が正しいと判断できる。

知っている人がやる3手順

ハードウォレットに初めてBTCを送る際、リスクを理解している人は次の順番で動く。

手順1:ハードウォレットの液晶でアドレスを目視確認する

受信アドレスを生成したら、PC画面に表示されているアドレスと、ハードウォレットの液晶に表示されているアドレスが一致しているかを確認する。全文字を暗記する必要はないが、最初と最後の6文字程度を目でなぞること。この一手間を省いたまま送金することはしない。

手順2:数千円相当の少額を先に送る

アドレスの一致を確認できたら、最初は数千円分の少額だけ送金する。保有しているBTC全額を一度に移してはならない。少額テスト送金の目的は、アドレスが実際に機能するかを確認することと、自分の送金操作に間違いがないかを検証することの2点だ。

手順3:受信を確認してから残りを移動する

少額が届いたことをウォレットソフトやブロックチェーンエクスプローラーで確認できたら、残りの金額を送る。この順番を省略する理由はどこにもない。


なぜこの3手順が省略されるのか。多くの場合、「このくらい大丈夫だろう」という判断が入る。しかしビットコインの誤送金に「大丈夫だろう」は通用しない。1回の送金で全額が消えれば、その後に何百回成功しても取り返せない。省略して失った人は「知らなかった」とは言えない。手順が存在することは広く知られている。それでも省略するのは、失敗の経験がなかったからだ。

取引所に預けたままのリスクは並走している

3手順を知っても、実際に移送を完了するまでの間はBTCが取引所に残っている。

取引所に預けたBTCは、取引所のシステム障害や経営上のトラブルが起きた際に、一時的あるいは長期的に引き出せなくなるリスクがある。秘密鍵を自分で管理していない以上、BTCを動かす権限は取引所のシステムに依存したままだ。

日本でも過去に複数の取引所が業務停止・廃業し、顧客資産の返還に数ヶ月から数年を要した事例がある。2024年のDMM Bitcoin事件では482億円相当が流出し、出金が再開されるまでに相当の期間を要した。取引所に何かあっても法的には顧客資産として保護される建前はあるが、実際に手元に戻るまでの時間は自分ではコントロールできない。


手順は複雑ではない。液晶でアドレスを確認する、少額を送る、受信を確認してから残りを送る。この3つだ。

ハードウォレットを購入し、シードフレーズを紙に書き出し、そこまで準備できているなら、最後のこの手順だけは省略しないでほしい。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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