採掘BTCは最初から自分の鍵|北欧の暖房費がBTCになる仕組み
冬になると、暖房費の請求額を見て溜め息をついたことがある人は多いはずだ。電力価格が上昇を続ける中、その支出を別の形に変えている家庭が北欧に存在する。ビットコインの採掘機を暖房として使い、電気代を払いながらBTCを積み上げる仕組みだ。
なぜ採掘機が暖房になるのか
ビットコインの採掘に使われるASIC(専用集積回路)マイナーは、消費した電力のほぼすべてを熱エネルギーに変換する。計算処理に使われたエネルギーは最終的に熱として放出され、室温を押し上げる。
コンピューターとして見ると「電力を大量に消費する非効率な機器」に映る。しかしストーブとして見直すと、話はまったく変わる。エアコンや電気ファンヒーターも電力を消費して熱を生み出す。ASICマイナーとの違いは、計算の過程でBTCが生まれるかどうかだ。
フィンランドやノルウェーでは、この逆転の発想を実践している家庭が増えている。室内に設置した採掘機が居室を暖め、同時に採掘報酬としてBTCが入ってくる。「どうせかかる暖房費」が、BTCを得るための原価に置き換わる構図だ。
採掘で得たBTCは取引所を通らない
多くの人がBTCを手に入れる方法は、取引所での購入だ。円をチャージし、BTCを買い、取引所口座に残高が表示される。この時点で、BTCの秘密鍵を保有しているのは取引所だ。
ハードウォレットに引き出せば秘密鍵は自分のものになるが、それまでは取引所が管理権を持ち続ける。
採掘の経路は、まったく異なる。採掘の設定をする際、報酬の受け取り先として自分のウォレットアドレスを指定する。ブロックが承認された瞬間、採掘報酬は直接そのアドレスに入金される。取引所の口座を経由しない。入出金申請も、本人確認も、出金審査も、一切ない。
BTCが生まれた最初の瞬間から、秘密鍵はすでに自分の手の中にある。これが採掘という取得方法の、構造的な特徴だ。
引き出せなかった80億ドルの記録
2022年11月、世界有数の取引量を誇っていたFTXが経営破綻した。その時点で顧客資産として計上されていた暗号資産のうち、約80億ドル相当が顧客に返却できない状態にあることが明らかになった。
FTX Japanの利用者資産も、返還手続きに数ヶ月を要した。日本では分別管理義務により法的な保護の枠組みがあるが、実際に資産を取り出せるまでの期間、出金はすべて止まった。
取引所に暗号資産を置いている間、何らかの事態が起きた場合に物理的・技術的に引き出せない期間が生じるリスクは常に存在する。これは法的な所有権の問題ではなく、アクセス権と管理権の問題だ。
採掘という経路はこの問題を構造から回避する。BTCが存在し始めた瞬間に、管理権はすでに自分にある。FTXのような出来事が起きても、採掘で得て自己管理しているBTCには何の影響もない。
「引き出す」ステップがない構造
セルフカストディの入門情報として多く語られるのは、「取引所からハードウォレットに移す」というステップだ。これは正しい手順だが、前提として「取引所に一度置く」という経路を経ている。
採掘の場合、その「一度置く」というステップ自体が存在しない。
もちろん、家庭での採掘は誰でも手軽にできるものではない。ASICマイナーの導入コスト、騒音、電力契約、設置環境など、クリアすべき条件は複数ある。また採掘の収益性は、ネットワーク全体のハッシュレートと電力単価に大きく左右される。
それでも北欧の事例が示す原則は、日本のBTC保有者にとっても意味を持つ。BTCを手に入れる経路そのものが、保有の安全性をあらかじめ規定しているという事実だ。
今持っているBTCの「出所」を確認する
北欧の採掘家庭に倣ってすぐASICを買う必要はない。しかし、自分が今持っているBTCがどこから来て、今どこにあるかを正確に把握することは、誰にでもできる第一歩だ。
取引所で買ったまま置いてあるのか、ハードウォレットに移してあるのか。一部は移してあるが残りはそのままか。
BTCの自己管理は「取引所から移す」という行為から始まるが、採掘は「最初から移す必要がない」という形で同じ終着点に至る。どちらの経路でも、辿り着くべき場所は変わらない。秘密鍵を自分が握っている状態だ。
まず今日、自分のBTCが今どこにあるかを確認するところから始めてほしい。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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