BTCを買っても終わらないカンティヨン効果|取引所という新たな末端

ビットコインを買ったとき、「これでインフレから守られた」と感じた人は多いはずです。しかし一つ確認したいことがあります。そのBTC、今どこにありますか。取引所のアカウントに表示されている数字を見て、自分の資産だと認識していませんか。

もしそうなら、カンティヨン効果から逃れたつもりで、実はその末端に立ちつづけているかもしれません。

約300年前に発見された格差の構造

1730年代、アイルランド系フランス人の経済学者リシャール・カンティヨンは一つの法則を見出しました。新しく発行されたお金は社会全体に均等には広がらない。中央銀行から銀行へ、銀行から大企業へ、そして最後に一般市民へという順番で流れていく。

この「3段階の順番」が格差を生みます。最初に受け取った者は、物価が上がりきる前に資産を買えます。株、不動産、設備投資。すべてが割安なうちに手に入る。

一方、その恩恵が一般市民に届くころには、物価はすでに上昇しています。賃金が多少上がっても、買えるものの量は減っている。これが格差拡大の根本構造であり、21世紀になっても繰り返されています。

FRBが2年間でやったこと

これは歴史の話ではありません。2020年から2022年にかけての米国に、同じ構造が刻まれました。

FRBはパンデミック対応として、約2年間で保有資産を約4兆ドルから約9兆ドルへと倍増させました。新たに生まれた約5兆ドルは、最初に金融システムの内部へ流れ込みました。株価は急騰し、主要都市の不動産は記録的な上昇を見せました。

一般市民が受け取ったのは、食料品や光熱費の値上がりでした。同じ出来事が、受け取る順番によってまったく異なる体験になる。カンティヨンが300年前に見抜いた構造が、世界最大の中央銀行によって改めて実証されました。

BTCを買っても、取引所に置けば話は終わらない

ここでビットコインが登場します。発行上限2100万枚、誰も増刷できない設計。これはカンティヨン効果への強力な対抗手段に見えます。

しかし一歩立ち止まって考えてみてください。取引所にBTCを預けているとき、そのビットコインに直接アクセスできますか。

取引所はあなたのBTCを管理しています。引き出せるかどうかは、取引所の経営状態、システムの稼働状況、規制当局の判断、そして万が一の破産手続きの進行によって左右されます。あなたにはそのどれにも介入する手段がありません。

2022年11月に起きたFTXの破綻を振り返ってください。約80億ドルの顧客資産が取引所に預けられていましたが、破産申請の翌日から出金は停止されました。分別管理義務があっても、実際に資金が戻るまでには長い法的手続きが必要です。そのあいだ、ユーザーは待つしかなかった。

これはカンティヨン効果の構造と重なります。取引所が先にアクセスし、ユーザーは最後列に並ぶ。インフレの連鎖から逃げようとしたはずが、別の形の「順番待ち」に入ってしまっているのです。

秘密鍵を持つとはどういうことか

ビットコインのプロトコルは、秘密鍵の保有者だけに送金の権限を与えます。これは法律や規制ではなく、数学的な仕組みです。

秘密鍵を自分で管理しているなら、取引所の経営状態は関係ありません。サーバーが止まっても、規制が変わっても、あなたのBTCはブロックチェーン上でただそこにある。動かす権限は秘密鍵を持つ者だけにあります。

カンティヨン効果の本質は「誰が先にアクセスできるか」という問題です。中央銀行が最初で、一般市民が最後。取引所が先にアクセスし、ユーザーが最後。秘密鍵を自分で持つことは、この「順番」という構造そのものから外に出ることを意味します。

完結させなければ、意味は半分しかない

ハードウォレットを購入し、シードフレーズを安全に保管し、取引所から自分のウォレットへ移す。手順は明確です。ただし、一度も復元テストをしていないシードフレーズは、いざというときに機能しない可能性があります。保管しているつもりで、誰もアクセスできない状態になっているケースは少なくありません。

カンティヨン効果から逃れるためにBTCを買ったなら、秘密鍵の管理まで完結させてはじめて、その設計の恩恵を受け取れます。BTCを買ったことと、そのBTCを本当に保有していることは、まったく別の話です。

今日中に、自分のBTCの所在を確認することから始めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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