97%が保険の外にいた|SVB崩壊が突きつけた上限制度の盲点
保険があるから大丈夫、とお考えではないでしょうか。銀行に預けたお金にも、取引所に置いたビットコインにも、「守られている」という感覚があります。しかし2023年3月に起きたシリコンバレー銀行(SVB)の崩壊は、その感覚がいかに脆弱かを、たった48時間で証明しました。
FDIC保険の上限と、守られなかった97%
アメリカの預金保険制度であるFDIC(連邦預金保険公社)は、銀行が破綻した際に1口座あたり最大25万ドルを保護します。仕組みとしては、日本の預金保険制度が1口座あたり1000万円を保護するのと同様です。
ところがSVBの顧客の大半は、テック系スタートアップや投資家でした。その多くが数億円から数十億円規模の資金を口座に保有しており、25万ドルという上限を大幅に超えていました。SVB全体の預金を見ると、保険対象外となった金額は実に97%にのぼっていたのです。
2023年3月10日、規制当局がSVBを閉鎖しました。週明けまでの48時間で、数千の企業が自分の口座にアクセスできない状況に追い込まれました。給与の支払いや取引先への送金ができなくなり、経営の根幹が揺らいだ企業も少なくありませんでした。
「預けている」と「持っている」は異なる
このSVBの事件が明確に示したのは、「資産を預けていること」と「資産を持っていること」は根本的に異なるという事実です。
SVBの顧客は、銀行が機能している間はアクセスできていました。しかしそのアクセス権は、銀行のシステムに全面的に依存していました。銀行が機能しなくなった瞬間、扉は閉まります。
最終的にFRBが異例の緊急措置として全額保護の方針を打ち出し、多くの預金者は損失を免れました。しかしこれは例外的な政治判断でした。通常のルールに従えば、25万ドルを超えた部分はそのままです。SVBの顧客が助かったのは、幸運と政治的判断によるものにほかなりません。
取引所BTCには「保険がゼロ」という現実
ここで、取引所に置いているビットコインの状況と照らし合わせてみてください。
日本の暗号資産取引所は、資金決済法のもとで顧客資産の分別管理が義務づけられています。これはある程度の法的保護を意味しますが、「即座に引き出せる」ことを保証するものではありません。取引所が経営危機に陥った場合、法的手続きのなかで資産へのアクセスが数ヶ月から数年単位で制限されることがあります。
2014年のマウントゴックス破綻では、顧客が資産の一部を取り戻すまでに約10年かかりました。FTXの場合も、多くの顧客が長期間にわたって資金にアクセスできない状況が続きました。
そして、見落とせない事実があります。銀行預金にはFDICのような保険制度があります。不完全であっても、上限内は守られます。しかし取引所のビットコインには、そのような保険制度が存在しません。「不完全な保護」すら存在しないのです。
秘密鍵を自分で持つことが意味すること
ビットコインが従来の金融システムと本質的に異なるのは、「秘密鍵を自分で保管すれば、第三者への依存なしに資産を管理できる」という点にあります。
取引所にビットコインを置いている場合、秘密鍵は取引所が管理しています。あなたが操作しているのは、取引所のシステムを通じたアクセス権です。取引所が停止すれば、そのアクセスは断たれます。
一方、ハードウェアウォレットを使ってセルフカストディを実践していれば、状況は変わります。SVBの顧客が口座凍結に直面した際、現金を手元に持っていた人が影響を受けなかったのと同じ構図です。ビットコインにおける「手元に持つ」に相当するのが、セルフカストディです。
セルフカストディの基本は、ハードウェアウォレットでシードフレーズを生成し、それを複数の安全な場所に分散して保管することです。一度この仕組みを整えれば、取引所の経営状況に関わらず、ビットコインへのアクセス権は自分の手の中に残り続けます。
次の「48時間」に備えられていますか
SVBの崩壊は2023年の出来事ですが、金融機関の脆弱性は現在も変わっていません。金利変動、信用収縮、地政学的なリスク——これらは今も金融機関を揺るがす要因として存在します。
取引所も例外ではありません。マウントゴックス、QuadrigaCX、FTXと、大規模な取引所の破綻は数年に一度のペースで繰り返されています。「自分が使っている取引所は大丈夫だろう」という確信は、SVBの顧客も同様に持っていたはずです。信頼は安全を意味しません。
今日一つだけ行動するとすれば、取引所に置いているビットコインの量を確認し、長期保有分のセルフカストディへの移行を検討してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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