使用期限付き通貨の時代|134カ国CBDCとBTCの設計原理

あなたが働いて得たお金に、政府が「使用期限」を設定する。そんな時代が、もうすぐそこまで来ている。

期限が切れると消える通貨の実験

2020年代前半、中国はデジタル人民元の試験的な配布を複数の都市で実施した。その一部では、配布された額に有効期限が設けられ、期限内に使わなければ自動的に失効する設計が採用された。「一時的な実験」と見る向きもあるかもしれないが、技術的にこの設計を恒久化することは難しくない。むしろ、政府にとってこのような制御は「有用な機能」として映る可能性がある。

現在、134カ国以上がCBDC(中央銀行デジタル通貨)の開発を進めている。主要国の中央銀行の9割以上がCBDCの研究または開発に取り組んでいることが、国際決済銀行(BIS)の調査でも示されている。

CBDCが設計として持つもの

CBDCは本質的に「プログラム可能な通貨」だ。技術的には、特定の用途にしか使えない制限(食料品のみ、特定地域のみなど)、送金記録の全件追跡、疑わしい取引の即時凍結、使用期限による強制消費促進、といった機能を実装できる設計になっている。

この中で特に見落とされがちなのが、「発行量に上限がない」という点だ。CBDCは既存の法定通貨と同様、政府・中央銀行の判断で発行量を増やすことができる。インフレという形でその影響は、通貨を保有するすべての人に等しく及ぶ。

BTCは真逆の設計を持っている

ビットコインは、発行上限が2100万枚と数学的に確定している。プロトコルに組み込まれたルールであり、どの国家も、どの企業も、どの個人も変更することはできない。

送金の凍結も設計上不可能だ。ビットコインネットワークに参加しているノードは世界中に分散しており、特定のエンティティが取引を止める権限を持っていない。秘密鍵を持っている者だけが送金を承認でき、それ以外の誰もその署名を代わりに行うことも、無効化することもできない。

CBDCが「権力者が設計する通貨」だとすれば、BTCは「数学が担保する通貨」だ。この設計の差は根本的であり、互換性がない。

取引所BTCは同じ構造に戻る

しかし、ここに見落とされやすい盲点がある。

取引所にBTCを預けている状態では、ビットコインの秘密鍵は自分の手元にない。秘密鍵を管理しているのは取引所だ。BTCというプロトコルは誰にも止められないが、取引所という仲介者が間に入る以上、「引き出せるかどうか」は取引所の状態次第になる。

2022年のFTX破綻では、多くのユーザーが出金を止められた。日本の法律上、取引所には顧客資産の分別管理義務が課されているが、分別管理された資産が実際に手元に戻るまでには、破産手続きという時間のかかるプロセスが必要になる。そのあいだ、BTCの価格が動いても、自分のBTCを動かすことはできない。

CBDCが「政府が許可する範囲でしか使えない通貨」だとすれば、取引所のBTCは「取引所が正常に機能しているあいだだけ引き出せる資産」だ。設計思想の出発点は違っても、管理権が他者にある点では同じ構造になっている。

秘密鍵を持つことで、設計の差が初めて有効になる

BTCがCBDCと真逆な存在として機能するためには、秘密鍵を自分で管理することが前提になる。

ハードウォレットを使い、シードフレーズを安全な場所に保管する。この手順を踏んで初めて、「誰にも止められない送金」「誰にも没収されない資産」というBTCの設計が、自分に対して有効になる。セルフカストディをしていない段階では、BTCを保有しているつもりでも、実際にはBTCが持つ耐検閲性の恩恵を受けられていない。

134カ国のCBDC開発という現実を見たとき、それへの個人レベルの回答は明確だ。秘密鍵を自分で握ること。それが、プログラム可能な通貨の時代における、最もシンプルで確実な防衛線になる。

取引所に眠っているBTCがあるなら、今日からセルフカストディの準備を始めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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