手数料1回で45チャネル|次世代LNに乗れない取引所BTC

ライトニングネットワーク(LN)を使おうとすると、最初の壁になるのが「チャネルを開く手数料」だ。誰かと決済するためにはオンチェーントランザクションが必要で、そのたびに手数料がかかる。LNが「安い決済」のための技術なのに、入り口でコストがかかる。この矛盾を根本から解消しようとした提案が、2018年の論文に記されていた。

10人が1トランザクションを共有すると何が起きるか

「チャネルファクトリー」と呼ばれるこの仕組みは、複数人が1つのマルチシグトランザクションに資金をプールし、そこから多数のLNチャネルを一括で設定するというものだ。

数学的には、n人の参加者がいるとき、作れるチャネルの最大数はn×(n-1)÷2本になる。10人なら10×9÷2=45本。1回のオンチェーントランザクションで、45本のLNチャネルが同時に開く。従来の方法なら45回のトランザクションと45回分の手数料が必要なところを、1回に圧縮できる。

Mempoolが混雑して手数料が高騰した局面では、この差が決定的になる。コストを多人数でシェアするという発想は、LNのスケーラビリティ問題へのシンプルかつ強力なアプローチだ。

Arkが継承した「オンチェーン1回」の思想

チャネルファクトリーの論文から約5年後、2023年にArkという新しいLayer2プロトコルが登場した。実装の詳細は異なるが、核心にある思想は同じだ。オンチェーンのコストを1回にまとめて、その中で大量のオフチェーン決済を実現する。

ArkはLNとは独立した設計で、チャネルを直接張り合う必要がなく、より少ない資本でオフチェーン決済に参加できる可能性を持つ。LNとArkは競合するのではなく、互いの弱点を補い合う技術として論じられることが多い。

次世代のビットコイン決済インフラが、この二つの技術の上に組み上がっていくとしたら、参加できる人と、できない人の差がどこで生まれるかを考える必要がある。

参加権限は「秘密鍵の持ち主」にある

チャネルファクトリーもArkも、参加に共通の前提がある。自分の秘密鍵で資金を動かせること、だ。

マルチシグのプールに資金を入れるには、自分の鍵で署名してオンチェーン送金をする必要がある。取引所に預けたビットコインは、署名の権限が取引所のシステムにある。取引所が将来「チャネルファクトリーに対応しました」と発表しても、実際に動くのは取引所が管理するウォレットであり、あなたがチャネルのオーナーとしてネットワーク上に存在するわけではない。

これはLNの時代から続く構造的な問題だ。取引所のLNウォレットを使っても、ユーザーが持つのは取引所との関係上の残高であり、実際のLNチャネルは取引所が保有している。取引所がどう動くかに、自分のアクセスが縛られたままになる。

技術の移行期、準備済みの人が最初に動ける

チャネルファクトリーはまだ本格的な実装には至っていない。ArkもMainnetへの広範な展開はこれからだ。しかしこうした次世代技術が現実のものになるとき、最初に恩恵を受けるのは準備が整っている人だ。

SegWitが有効化されたとき、対応したウォレットを持っていた人はすぐに手数料の低下を体感できた。Taprootが導入されたとき、bc1pアドレスを使える状態にあった人と取引所の残高として保有していた人に、機能差が生じた。次のLayerが動き始めたとき、秘密鍵を自分の手元に持っているかどうかが、同じ分岐点になる。

取引所が新しいプロトコルに対応するには、規制対応・システム改修・内部承認のプロセスが必要だ。技術が準備できていても、ユーザー側はその間を待たされる。セルフカストディのユーザーはその間も、自分の判断でいつでも動ける。

今の保管の選択が、次の技術への入場券になる

45本のチャネルを1回の手数料で開く技術は、LNのコスト構造を根本から変える可能性を持つ。Arkと組み合わせれば、ビットコインのオフチェーン決済はまったく別の水準に進化するかもしれない。

ただしその技術が実用化されたとき、誰が乗れるかはすでに決まっている。秘密鍵を自分で管理しているかどうかだ。

ハードウェアウォレットを用意し、シードフレーズを安全な場所に保管する。それだけで、次世代の技術が動き始めたとき、あなたはすぐに参加できる側に立てる。取引所の残高のまま保有することは、その選択を常に一手遅らせる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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