BCHを5ヶ月待った人と即日受け取った人|2017フォークが問う秘密鍵

2017年の夏、同じビットコインを持ちながら「増えた人」と「増えなかった人」がいた。価格の話ではない。保有枚数はまったく同じなのに、片方は同量の新しいコインを受け取り、もう片方は受け取れなかった。その差は秘密鍵を自分で持っていたか否か、ただ一点だった。

8月1日に起きたこと

2017年8月1日、長年燻っていたビットコインのブロックサイズ論争がついに分岐という形で決着した。ブロックサイズの拡大を主張するグループが独立し、BCH(ビットコインキャッシュ)が誕生した。

ハードフォークと呼ばれるこの分岐は、当時ビットコインを保有していた全員に対して、同量のBCHを受け取れる権利を生じさせた。1BTC保有なら1BCH、10BTC保有なら10BCH。プロトコルの仕組み上、自分で秘密鍵を管理していたウォレットユーザーは、何もしなくても両方の通貨を手にした。

問題は、取引所に預けていた場合だ。

取引所は顧客のビットコインを代わりに保管し、管理している。フォークが起きた場合、新しいコインを配布するかどうか、いつ配布するかは取引所が決める。当時最大手の一つだったCoinbaseは、BCHフォーク当日に配布対応を行わなかった。ユーザーに知らせる義務も、配布のタイムラインも、Coinbase側の判断に委ねられていた。

CoinbaseがBCH配布を開始したのは、フォークから約5ヶ月後の2017年12月のことだ。その5ヶ月の間、BCHは市場で独立して取引されており、価格は大きく動いていた。「いつ受け取れるか」を決めたのはCoinbaseだ。ユーザーには選択権がなかった。

58社が賛成しても覆らなかった

同じ2017年の11月、今度はビットコイン自体のプロトコルを書き換えようとする試みが起きた。SegWit2xと呼ばれる変更計画で、大手取引所、採掘会社、ウォレット企業など58社が賛成した。当時のビットコインハッシュレートの大半を占める採掘者グループも支持に回った。

数字だけ見れば「通る」と思うのが自然だった。しかし、SegWit2xは否決された。

ビットコインのプロトコル変更が実際に採用されるかどうかを決めるのは、採掘者でも企業でもなく、フルノードを実行している個人だ。フルノードとはビットコインのすべてのブロックと取引を独自に検証するソフトウェアで、世界中の個人がそれぞれ自分のマシンで動かしている。

フルノード運営者の多数が「この変更は受け入れない」と判断すれば、いくら採掘者が新しいブロックを作っても、そのブロックは正当なビットコインとして認識されない。企業の会議室で決まるのではなく、個人のノードが日々行う検証によって、ビットコインのルールが維持されている。

SegWit2xが否決されたとき、取引所にビットコインを預けているユーザーにできることは何もなかった。ノードを動かしているわけでも、賛否を表明できる立場にあるわけでもなく、ただ結果を待つだけだった。

「決める側」と「待つ側」の非対称

この二つの出来事が示しているのは一つの非対称性だ。

フォーク時に何を受け取れるか:取引所が決める。どのプロトコル変更が採用されるか:フルノード運営者が決める。取引所保管ユーザーが関与できる場面:ない。

2017年の騒動でもう一つ重要なのは、個人ノードの集合体としてのビットコインネットワークが、58社の賛成すら覆す力を持っていたという事実だ。その力の源は、ビットコインを自分で動かし続けていた無名の個人たちにあった。

この構造は、ビットコインの分散性を守る設計そのものだ。特定の企業や勢力が一方的に書き換えられないように、権力をノード運営者全体に分散させている。そしてその設計の恩恵を受けられるのは、秘密鍵を持ち、自分のノードを動かしている人だけでもある。

歴史は繰り返す条件がある

2025年現在、ビットコインを取り巻く環境は2017年当時と比較にならないほど変化した。機関投資家の参入、ETFの登場、各国政府の規制整備。しかし取引所に預けたビットコインの管理権が取引所にあるという構造は、何も変わっていない。

次のフォークがいつ起きるかは誰にもわからない。次のプロトコル論争がいつ始まるかも。しかし確かなことがある。そのとき選択権を持っているのは、秘密鍵を自分で管理している人だけだということだ。

ハードウォレットを一台用意し、ビットコインを自分の管理下に移す。それが、ビットコインを「完全に保有する」ための最初の一歩だ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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