LUNAを無制限発行した日|変えられる通貨とBTC2100万枚

「1ドルは絶対に守られる」——その言葉を、あなたはどう評価しただろうか。

アルゴリズムが保証する、と言われれば数学的な確実性のように聞こえる。だが2022年5月、TerraUSDのアルゴリズムは設計通りに動いた。そして5日で崩壊した。

防衛機構が防衛対象を破壊した

ペッグが崩れ始めた5月9日、Luna Foundationは保有していた約15億ドル相当のBTCを売却し、USTを買い支えようとした。緊急介入の情報はSNSで瞬時に広がり、かえって不安心理を加速させた。

次に発動されたのが、プロトコル本来の防衛機構だった。USTが売られるほどLUNAを自動生成してUSTを吸収するという仕組みだ。

しかし発動されるほどLUNAの発行量は急増した。数百億枚が数千億枚になり、数兆枚になった。1枚あたりの価値は分の一、百分の一へと崩落した。価値を失ったLUNAでUSTを買い戻しても、ペッグを支える力はない。

約180億ドルが消え、LUNAは実質ゼロになった。介入そのものが、崩壊を完成させた。

取引所に預けていた人に起きたこと

崩壊の速度は理性的な判断を許さなかった。5月10日から12日にかけて、各取引所ではUST・LUNAの取引停止と出金制限が相次いだ。

自分のウォレットでUSTを管理していた人は、崩壊の初期に売却の選択肢があった。取引所に預けていた人は違った。出金申請は処理されず、注文を出しても約定しない。画面の数字だけが一方的に下がり続けた。「何かおかしい」と感じてから動いても、すでに遅かった。

48時間が、準備していた人としていなかった人の差を決めた。

アルゴリズムの保証と数学の保証は根本的に違う

USTの設計者は「アルゴリズムが1ドルを保証する」と説明した。多くの人がこれに数学的な確実性を感じたが、二つの間には決定的な差がある。

アルゴリズムは人間が書く。前提が崩れれば、設計者が変更できる。「緊急時にはLUNAを追加発行する」という選択肢は設計者の権限範囲に含まれていた。実際にその選択が実行され、崩壊を加速させた。

ビットコインの2100万枚という上限は誰も変えられない。発行スケジュールはプロトコルに刻まれており、どんな緊急事態でも追加発行という選択肢は存在しない。変更を提案できる開発者はいるが、採用を強制できる主体は誰もいない。新しいルールを実装したノードは、旧ルールのノードから接続を拒否される。世界中の2万台以上のフルノードが、自発的な合意なく変更が通らない構造を維持している。

サトシ・ナカモトが姿を消したことで、書き換えを決断できる創設者がいなくなった。これはバグではなく、設計として機能している。

担保は「循環」に過ぎなかった

TerraエコシステムでUSTを支えていた主軸は、Anchor Protocolが提供していた年率20%の利回りだった。この利回り需要がLUNAの価値を作り、LUNAの価値がUSTのペッグ機構を動かす構造だった。

利回りの原資は最終的にLuna Foundationの準備金から補填される部分が大きく、持続可能なモデルではなかった。担保の実態は「循環する約束」だった。

循環のどこか一点でも「続かない」という確信が市場に広がれば、全体が逆方向に作動する。1ドルの保証を信じた人たちの資産が、その循環の上に積み上げられていた。

BTCセルフカストディが遮断するリスク

「自分はBTCしか持っていないから関係ない」という見方は、半分しか正確ではない。

取引所でBTCを保管している場合、取引所が何らかの理由で機能を停止すれば動かせなくなる。規制当局の命令、流動性危機、セキュリティインシデント——引き金は複数あり、崩壊の速度は判断を待ってくれない。USTの崩壊は48時間以内で決定的になった。BTC取引所の問題が同じ速度で進まない保証はどこにもない。

自分の秘密鍵を自分で管理するセルフカストディは、この構造的リスクを遮断する。ハードウェアウォレットに移したBTCは、取引所の状況に関係なく自分で動かせる。購入・設定・シードフレーズの保管まで、一連のセルフカストディは一日あれば整えられる。

平常時に準備を整えておくことが、緊急時の選択肢を確保することに直結する。2022年5月の教訓は速度の問題だった。今日始めることが、準備できていた側に立つ唯一の方法だ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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