37BTCの手数料競争|Runesが示すブロックスペース入札の現実
2024年4月20日、ビットコインは4度目の半減期を迎えた。その同じ日に、もう一つの出来事が起きた。開発者たちが数ヶ月前から準備していたRunesプロトコルが一斉に始動し、メモプールに数十万件の未確認取引が殺到した。
結果として、1つのブロックに積まれた手数料が37BTCを超えた。当時の価格で約3億円。本来のブロック報酬(3.125BTC)の10倍以上が、手数料だけで集まった瞬間だ。
その日、取引所にBTCを預けていた人は何を経験したか。答えは「何もできなかった」だ。
ブロックスペースは競争入札で割り当てられる
ビットコインのブロックは約10分に1回生成され、収容できる取引数には上限がある。メモプールに未確認取引が大量に溜まると、マイナーは手数料が高い順に取引を選ぶ。これは実質的な競争入札だ。
急いで送金したければ、より高い手数料を提示して優先処理を求める必要がある。RBF(Replace-by-Fee)はその手段で、まだ未確認のまま待機中の取引に対し、手数料を引き上げた新しい取引に差し替えることで、確認の優先順位を上げられる。
ただし、RBFの実行には一つの条件がある。その取引に署名した秘密鍵が必要だということだ。
秘密鍵を持たないと入札に参加できない
取引所に預けているBTCは、取引所が秘密鍵を管理している。オンチェーンでの取引に直接署名できるのは取引所側であり、ユーザーにはその権限がない。
混雑時に取引所が低手数料の取引を送信し、それがメモプールで数時間から数日間止まることがある。出金申請を受理された後でも、手数料を引き上げる操作はできない。RBFの実行権限は秘密鍵の保持者——つまり取引所だ。どの顧客の取引を優先するか、いくらの手数料を上乗せするかは、すべて取引所の判断に委ねられる。
一方、セルフカストディで秘密鍵を自分で持っていれば話は違う。Sparrow WalletやElectrumのような対応ウォレットから、数回の操作でRBFを実行できる。手数料を引き上げ、優先レーンへ移動させる——この権限が自分の手の中にある。
Runesが詰まらせた日の構図
Runesは、ビットコインのトランザクション内にデータを刻み込む形でトークンを発行するプロトコルだ。NFT的なOrdinalsの後継として設計され、ハルビングという注目度の高い日を始動タイミングに選んだことで、発行競争が一気に爆発した。
通常の送金を目的とした取引と、Runes発行を目的とした取引が同じメモプールで入り乱れた。マイナーにとっては手数料さえ高ければ何でも良い。その結果、通常の送金が後回しにされた。
この構図は今後も繰り返し得る。新しいプロトコルやトークンブームが再来するたびに、同じ競争が起きる。ビットコインのブロックスペースは設計上固定されており、需要が急増すれば常に手数料競争が発生する。
ブロックスペースの入札権を持っているか
2024年4月20日に積まれた37BTC分の手数料は、オンチェーンで自分の取引を主体的に操作できる者が支払ったものだ。彼らはブロックスペースの競争入札に参加し、望む結果を自分で引き寄せた。
ビットコインは中立なプロトコルだ。手数料を払えた取引を処理し、払えなかった取引を待機させる。取引所の顧客だから優遇される、といった仕組みは存在しない。
取引所のBTCを持つことは、渋滞時にハンドルを他人に預けている状態に近い。目的地に向かおうとはしているが、裏道を使うかどうか、速度を上げるかどうかは運転手が決める。自分で秘密鍵を管理するということは、その運転席に自分が座ることだ。
最初の一歩は今日からでも遅くない
ハードウォレットの設定は難しそうに見えて、基本的な手順は数時間で習得できる。Sparrow WalletとColdcardの組み合わせ、あるいはSparrow単体での設定から始めるだけでいい。
次にメモプールが混雑した日——それはRunesかもしれないし、全く別のプロトコルかもしれない——あなたはブロックスペースの競争に参加できる側にいるだろうか。それとも、後列でただ待つ側にいるだろうか。
鍵を持つかどうかの選択が、その答えを決める。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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