賛成票が招いたもの|TaprootとOrdinalsの設計上の逆説

2021年11月、ビットコインのTaproot改善がアクティベートされた。マイナーの賛成率は98%を超え、ビットコイン史上最も円滑に実装されたソフトフォークの一つとなった。プライバシーの向上、Schnorr署名による多重署名の効率化、スマートコントラクトの柔軟性拡張——ビットコインマキシマリストたちはこれを歓迎した。コミュニティの合意形成はほぼ全会一致に近く、「これこそビットコインが進むべき方向だ」という空気があった。

だが、その同じTaprootが約1年後、マキシマリストが最も嫌うものを技術的に可能にすることになる。

Taprootのwitnessデータが開いた「抜け穴」

ビットコインのSegWit実装(2017年)以降、witnessデータ——署名などの認証情報——は通常の1/4のコストで処理される仕組みになっている。これは「SegWit discount」と呼ばれる設計上の優遇だ。本来の目的は署名データに対する手数料インセンティブを適正化し、スケーラビリティを改善することだった。

Taprootはwitnessデータの柔軟性をさらに拡張した。Tapscriptという仕組みにより、witnessフィールドにより多様なデータを格納できるようになった。ビットコインの1ブロックあたりの実効容量は最大約4MBまで広がり、その1/4コスト空間に収めることができる情報の種類が格段に増えた。

Ordinalsはこの構造を利用した。2023年初頭に登場したOrdinalsプロトコルは、サトシ(ビットコインの最小単位)に連番を振り、witnessデータに画像や文章を直接刻み込む方法を確立した。技術的にはビットコインのコンセンサスルールの範囲内であり、ネットワークがValidだと判断するトランザクションである以上、誰も拒否できない。

「スパム」と批判しても止まらない理由

マキシマリストのXタイムラインは一時期、Ordinalsへの批判で溢れた。「これはビットコインブロックチェーンのスパムだ」「デジタルゴミを刻み込む仕組みは不要だ」「サトシはこれを意図していなかった」。著名なマキシマリストの多くが削除・制限を求め、一部のマイナーはOrdinalsトランザクションを弾こうと試みた。

だが、誰も止められなかった。

ビットコインの検閲耐性は、特定の国家が禁止しても、特定のマイナーが排除しようとしても、コンセンサスルールを満たすトランザクションをネットワーク全体が処理し続ける設計に由来する。この仕組みは、権力者が「これは許可しない」と言ったとき、個人の資産を守るために機能する。

同じ検閲耐性は、マキシマリスト自身の意図にも逆らって機能する。「自分たちが嫌いな使われ方をするトランザクション」も、コンセンサスルールを守っている限りネットワークは受け入れる。TaprootのwitnessデータをOrdinalsが利用した以上、それはビットコインの正規のトランザクションだ。削除する手段はない。

これは設計上の欠陥ではなく、設計上の必然だ。検閲耐性とは「誰に対しても平等に機能する」ことを意味する。ビットコインは特定の用途を「正しい使い方」として優遇しない。その無差別性こそが、あなたの資産を守る原理と同じものだ。

取引所が直面する識別不能の問題

Ordinalsの登場は、もう一つの現実を浮き彫りにした。

Ordinals付きのサトシとそうでないサトシは、通常のビットコインプロトコルの視点では区別できない。1サトシは1サトシだ。しかし、Ordinalsコミュニティの中では、特定の番号が振られたサトシや、そこに何らかのデータが刻み込まれたサトシは高い価値を持つとされる。半減期直後のサトシや、難易度調整点のサトシは「希少サトシ」として区別して管理する文化が生まれた。

ここで取引所の限界が現れる。取引所はユーザーの預かり資産を一元管理しており、どのサトシがどのユーザーのものかを個別のUTXOレベルで追跡していない。ユーザーが「特定のOrdinals付きサトシを保有している」という状態を維持することは、取引所の現行システムでは技術的に困難だ。出金時に「預けたものと同じサトシ」が戻ってくる保証はない。

これは今に始まった問題ではない。取引所でビットコインを管理するということは、「どのUTXOを保有しているか」を主体的に管理できないことを意味する。プライバシーの観点でも、Coin Controlの観点でも、そしてOrdinalsの文脈でも、真のUTXO管理は秘密鍵を自分で保持している者にしか実現できない。

逆説が問うこと

Taprootを推進したマキシマリストたちは、ビットコインをより良くしようとしていた。その動機に偽りはなかっただろう。しかし結果として、witnessデータの1/4コスト優遇という設計が、自分たちが批判するユースケースに利用された。

この逆説はビットコインの本質を示している。ビットコインは特定のイデオロギーのために動くのではなく、コンセンサスルールのために動く。ルールを守れば、誰の意図も、どの思想も、等しく処理される。それがビットコインの強さであり、時に推進者の意図を裏切る理由でもある。

秘密鍵を持つということは、この仕組みの中に直接参加するということだ。取引所のシステムを経由した間接的な参加では、自分のUTXOが今どういう状態にあるかを自分では確認できない。OrdinalsであれCoinJoinであれ、新しいプロトコルが生まれるたびに、その判断を下せるのは鍵を持つ者だけだ。

まだ秘密鍵を自分で管理していないなら、今日がその第一歩を踏み出す日かもしれない。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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