FDIC基金は全預金の0.7%|JPモルガン1行崩壊で消える数学
銀行に預けているお金は、何かあっても守られる——そう信じている人は多いでしょう。預金保険制度があるから安心だ、と。しかし、この「保護」が実際にどれほどの数学的根拠を持っているか、具体的な数字で確かめた人はほとんどいないはずです。
FDICが謳う「保護」の中身
米国では、連邦預金保険公社(FDIC)が預金者1人あたり最大25万ドルまで保護すると定めています。日本でも、預金保険機構が1口座あたり元本1,000万円までを保護する仕組みがあります。
これらの制度は、「銀行が破綻した場合でも、一定額までの預金は守られる」という約束です。問題は、この約束を実行するための基金に、どれだけの資金が積まれているか、という点です。
基金残高は全預金の0.7%
FDICが管理する預金保険基金の残高は、約1,200億ドルです。一方、米国の銀行全体が預かっている預金総額は約17兆ドル。基金残高は、全預金総額のわずか0.7%にも満たない計算になります。
「通常の銀行破綻なら対応できる」という考え方もあります。実際、中小規模の銀行が1〜2行破綻する程度であれば、基金で対処できるでしょう。しかし「通常」の範囲を超えたとき、この数字の薄さが致命的になります。
JPモルガン1行で基金の20倍が消える
米国最大の銀行であるJPモルガン・チェースの預金残高は、約2.4兆ドルとされています。FDIC基金の残高1,200億ドルと比較すると、約20倍です。
JPモルガン1行が崩れれば、保険基金は数日で枯渇する計算になります。残る預金者への補償は、政府の裁量——つまり税金や新たな財政措置に頼るしかない状況に追い込まれます。
「大きすぎて潰せない(Too Big to Fail)」という言葉は、単なる経済用語ではありません。政府が何らかの形で介入せざるを得ない、という政治判断を正当化するための概念です。
2009年、基金は実際にマイナスに転落した
これは仮定の話ではありません。2009年、リーマンショック後の金融危機において、FDICの保険基金は実際にマイナスに転落しました。100行以上の銀行が破綻し、基金が底をついたのです。
2023年のシリコンバレーバンク(SVB)崩壊でも同様の構図が現れました。SVBの預金の多くは25万ドルを超えており、本来ならばFDICの保護範囲外でした。しかし政府は緊急対応として全額保証に踏み切りました。理由は「パニックを防ぐため」という政治的判断です。
これらの事例が示すのは、預金保険が「あらかじめ積み立てられた確実な保障」ではなく、「政府がその都度判断する緊急措置」として機能してきたという現実です。
「保険」という言葉が作る錯覚
保険という言葉には、保険料を積み立て、条件を満たせば必ず支払われる、というイメージがあります。しかし、FDIC保険の構造はその期待とは異なります。
全預金のわずか0.7%しかカバーできない基金規模。崩れれば基金の20倍以上が消えるほどの巨大銀行の存在。そして2009年に実際にマイナスに転落した歴史。
これらを並べると、FDIC保険は「確実な保障」ではなく「政府がきっと何とかする」という期待の上に成立しているとわかります。数学的な保証ではなく、政治的な判断が土台になっているのです。
BTCのセルフカストディが示す別の設計原理
ビットコインには、2,100万枚という発行上限があります。この数字は、誰かが「今回だけ例外」と決定できるものではありません。コードとして動いているルールであり、政府の裁量や緊急措置が介入する余地がない設計です。
一方、ビットコインを取引所に預けている場合、構造的なリスクは銀行預金と重なる部分があります。秘密鍵を自分で管理していなければ、万一の事態が起きたとき、すぐには引き出せない状況になりえます。FDICが「政府が救済してくれる」という前提で成立しているように、取引所への信頼も「何とかなるはず」という期待に依存しやすい。
セルフカストディ、つまりハードウォレットなどを使って秘密鍵を自分で管理することは、この「政治的判断待ち」の状態から抜け出すことを意味します。誰かが「救済する」と決断するのを待つ必要がなくなります。
数学と政治判断の非対称
銀行の預金保護は、政府が「救済する」と判断した場合に機能します。政治的・財政的に救済が難しい局面では、その保護が期待通りに機能しない可能性もあります。
ビットコインの秘密鍵管理は、政府の判断を必要としません。自分が秘密鍵を保有していれば、誰かの決定を待たずにビットコインにアクセスできます。この差は、平時にはほとんど見えません。問題が起きたときに初めて、その非対称性が現れます。
全預金の0.7%という数字を知ったとき、「銀行預金は安全だ」という感覚が少し変わるかもしれません。まずは自分の資産がどのような前提の上に置かれているかを確認し、ビットコインの自己管理を選択肢として検討してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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