2017年フォーク危機の傍観者|取引所BTCが届かない統治の現実
2017年の春、あなたのビットコインはどこにありましたか。
国内の取引所アカウントにBTCを預けていた方は、その時期に起きていた攻防戦をどこかで耳にしていたかもしれません。「ブロックサイズ戦争」と呼ばれた論争です。Bitcoin Unlimitedという勢力が、ビットコインネットワーク全体のハッシュレートの約40%を掌握し、ビットコインの根本的なルールを書き換えようとしていました。
もしあの攻防で別の結果になっていたら、今あなたが保有しているビットコインは、まったく異なるプロトコルのうえに存在していたかもしれません。
2015年から2017年、3度の書き換え試みがあった
ブロックサイズをめぐる対立は一度ではありませんでした。Bitcoin XT、Bitcoin Classic、そしてBitcoin Unlimitedと、3つの勢力が相次いでプロトコル変更を主導しようとしました。
なかでも2017年春のBitcoin Unlimitedは深刻でした。掌握したハッシュレートは最大40%前後に達し、マイナーの支持を取り込みながら変更実現に向けて圧力をかけ続けていました。
ビットコインのセキュリティモデルでは、51%以上のハッシュレートを持つ勢力が理論上チェーンを支配できます。40%という数字は、その一歩手前の水位でした。緊張感は当時、相当なものだったはずです。
取引所に預けていた人の立場
では、この攻防の最中に取引所のアカウントにBTCを置いていた人々は、何ができたでしょうか。
何もできませんでした。文字通り、傍観するしかなかったのです。
ビットコインのプロトコル変更に対して意思を示す手段は、Bitcoin Coreのフルノードを走らせることです。どのルールを支持するかは、自分が動かすノードソフトウェアによって示されます。フルノードが変更案を組み込んだコードを動かさなければ、その変更は実質的に採用されません。
取引所のアカウントには、フルノードも秘密鍵もありません。もしチェーンが分岐した場合、どちらのコインがあなたに割り当てられるかを決めるのは取引所です。ユーザーに選択する余地はなく、取引所の判断を待つしかありませんでした。
自分のBTCの未来が、自分以外の誰かに決められる。これが取引所保管の実態です。
採掘力40%が無効だった理由
3度の試みはすべて失敗に終わりました。なぜでしょうか。
採掘者(マイナー)がどれほどのハッシュレートを持っていても、「ビットコインのルール」を一方的に変えることはできません。ビットコインのガバナンスにおいて、本当の意思決定者は経済的なノード、すなわち各自が運用するフルノードの集合体です。
Bitcoin Unlimitedの変更案を、世界中のフルノードの大多数が受け入れませんでした。ノードがBitcoin Coreのルールで動き続けることで、変更は事実上の否決を受けました。採掘者が何%のハッシュレートを持っていようと、フルノードが拒否すれば、そのブロックは正統なチェーンとして認められません。
採掘力はセキュリティを支えますが、統治権はノードが分散して持っています。Bitcoin Unlimitedの失敗は、この構造を世界に証明した出来事でした。
当事者と傍観者を分けるもの
2017年の攻防は、ある意味でビットコインの強さを証明しました。中央に統制する組織がなく、単一の意思決定者もいない状態で、匿名の個人ノード運用者たちがプロトコルの核心を守り切りました。
この構造は今も変わっていません。プロトコルへの変更提案はこれからも出てくるでしょう。採掘者の大きな勢力が特定の変更を支持する場面も来るかもしれません。
そのとき、あなたはどこに立っていたいでしょうか。
取引所のアカウントにBTCを置いたままであれば、次の攻防が来ても立場は変わりません。傍観者として、取引所の判断を待つだけです。
自分の秘密鍵で自分のBTCを管理し、フルノードを運用しているなら、その判断に参加できます。使うソフトウェアを自分で選ぶことで、「本物のビットコイン」がどのルールのうえに立つかを定義する側に立てます。
セルフカストディは単なるセキュリティ対策ではありません。ビットコインという分散合意ネットワークへの参加権そのものです。鍵を持つ者だけが、この歴史の当事者になれます。まだ取引所にBTCを預けたままなら、ぜひ今日、最初の一歩を考えてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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