令状なし3社封鎖が示した構造|WikiLeaksと取引所BTCの同じ弱点

2010年12月、WikiLeaksはある瞬間を境に世界中から送金を受け取れなくなりました。PayPal、Visa、Mastercard。三社がほぼ同時に、サービスを停止しました。裁判所命令はありませんでした。警察の捜査令状もありませんでした。「企業の判断」だけで、世界規模の資金封鎖が完成したのです。

その封鎖に要した時間は、数日に過ぎませんでした。

「判断」で止まる送金の構造

WikiLeaksへの寄付を止めたのは、法律ではありませんでした。当時のアメリカ政府からの政治的圧力があったとされていますが、法的な命令書は存在しなかったとWikiLeaks自身が述べています。三社は独自の「利用規約」を根拠に、自主規制として封鎖を実行しました。

この構造の意味を考えてください。どれほど正当な資金移動であっても、決済インフラを握る企業が「止める」と判断すれば、それで終わりです。あなたは異議を申し立てることすらできない。

取引所に預けたビットコインには、まったく同じ構造が存在します。

取引所BTCの「封鎖ポイント」

取引所でビットコインを保有している場合、秘密鍵はあなたの手元にありません。出金を申請しても、取引所が「一時停止」と判断すれば、ビットコインは動きません。その判断の根拠は、システム障害かもしれず、規制当局の指示かもしれず、あるいは取引所独自のリスク判断かもしれません。

日本の資金決済法では、取引所は顧客資産を分別管理する義務を負います。法律上の所有権はあなたにあります。しかし問題は所有権ではなく、アクセス権です。出金が止まれば、そのビットコインを実際に動かすことはできない。法律上の権利と、実際に操作できるかどうかは、まったく別の問題です。

WikiLeaks支持者たちも、PayPalに「自分のお金だ」と主張することはできました。しかしお金は動きませんでした。

Nostrとは何か

Nostrは「Notes and Other Stuff Transmitted by Relays」の略称で、2022年ごろから普及が進んだ分散型通信プロトコルです。最大の特徴は、中央サーバーが存在しないことです。

従来のSNSやメッセージングサービスは、単一の企業が運営するサーバーを通じてデータが流れます。その企業が「停止」と決めれば、すべての通信が止まります。Nostrはこの構造を根本から変えています。

Nostrにはリレーサーバーが世界中に多数存在しますが、特定の一社が支配しているわけではありません。あるリレーが停止しても、別のリレーを経由してメッセージは届きます。封鎖する「場所」が設計上存在しないプロトコルです。

Zap:NostrとBTCが交わる場所

NostrにはZapという機能があります。これはライトニングネットワーク(LN)を使ったBTC送金を、Nostrのプロトコル上で実行する仕組みです。

メッセージを送るのと同じ感覚で、サトシ単位の少額送金が世界中に届きます。その送金経路には、PayPalもVisaもMastercardも介在しません。取引所も介在しません。

2010年にWikiLeaksが直面した問題を、Nostr経由のBTC決済は技術的に回避します。企業の判断で封鎖できる「場所」が、プロトコルの設計上存在しないからです。単一の企業が「停止」と決めても、他のリレーを通じて送金は継続します。

自己管理なしでは使えない

ただし、ここで重要な点があります。NostrのZap機能をフル活用するには、自分の秘密鍵でビットコインを管理していることが前提になります。取引所に預けたままのビットコインでは、ライトニングネットワーク上での直接送金はできません。

技術は進化しています。検閲耐性を持つ送金インフラは、すでに動作しています。しかし、その恩恵を受け取れるのは、秘密鍵を自分で管理している人だけです。

2010年、WikiLeaks支持者たちはPayPalの「判断」に対抗する手段を持っていませんでした。今、ビットコインとNostrを組み合わせれば、同じ状況で別の選択肢が存在します。その選択肢を手に入れるための第一歩が、セルフカストディです。

あなたのビットコインは、今夜、動かせますか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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