薪1束になった一生の貯蓄|1923年ワイマールとBTC管理権
取引所にビットコインを預けたまま、安心していませんか。
100年前、同じことを考えていた人たちがいた。ドイツの工場労働者たちは、銀行口座に一生分の貯蓄を預け、政府の通貨制度を信頼していた。それが1923年、一夜にして崩れた。
1ドルが4兆2000億マルクになった年
1923年のワイマール共和国では、政府が軍の賠償金を支払うために紙幣を刷り続けた。1月に1ドルあたり約1万マルクだった為替レートは、11月には4兆2000億マルクまで膨張した。たった10ヶ月で、通貨の価値は4億分の1になった。
工場の賃金はパンや薪、石炭といった物品で支払われるようになった。マルク紙幣を受け取って帰宅する途中で価値が下がるため、受け取った場で使い切るしかなかった。銀行に預けていた一生分の貯蓄は、数ヶ月で紙くず同然になった。
問題は、彼らが判断を誤ったわけではないということだ。当時の常識に従い、信頼できる機関に資産を預けていた。その「信頼できる機関」が崩壊したとき、引き出す手段は残っていなかった。
BTCの2100万枚上限だけでは守れない理由
ビットコインは設計上、2100万枚しか発行できない。政府が紙幣を増刷するように、誰かがBTCを刷り増すことは数学的に不可能だ。この希少性がワイマールの悲劇を繰り返さない仕組みだと、多くのBTC保有者が理解している。
しかし一つの前提が抜けている。その希少性の恩恵を受けるには、秘密鍵を自分で管理している必要があるということだ。
取引所にBTCを預けている状態では、秘密鍵は取引所が保有している。画面に表示される残高は取引所のデータベース上の数字であり、それを動かす権限(秘密鍵)はあなたの手元にはない。インフレへの備えとしてBTCを購入しても、取引所に預けたままでは管理権の問題が残る。
出金が止まるとき、あなたには何の手段もない
取引所が正常に動いている間は、この問題は表面化しない。しかし「何か」が起きたとき、状況は一変する。
出金停止の引き金は複数ある。規制当局による凍結命令、取引所の経営危機、ハッキングによる資産流出、システム障害——いずれの場合も、ユーザーは出金処理の順番を待つしかない。1923年のドイツ人が銀行窓口の前で列を作ったように。
日本では資金決済法により、取引所は顧客資産の分別管理が義務付けられている。これはあなたの資産が保護されているという意味だが、「いつでも即座に取り出せる」ことを保証するものではない。出金停止中にBTCの価格がどれだけ動いても、動かせないBTCを持ちながら相場を見ることしかできない。
ハードウォレットが返す管理権
秘密鍵を自分で管理する手段として、ハードウォレット(専用デバイス)がある。オフライン環境で署名を行うため、ネットワーク上の脅威や取引所の状況に左右されず、自分のBTCを自分で動かせる状態になる。
設定時に外せない確認が3点ある。
- シードフレーズ(12〜24語の復元フレーズ)を紙または金属に記録し、デジタル保存は避ける
- 設定後、少額のテスト送金と復元確認を必ず行う
- シードフレーズはハードウォレット本体とは別の場所に保管する
1923年のドイツ人には選択肢がなかった。紙幣と銀行という2つの手段は、どちらも同じ政府の決定に縛られていた。現代のBTC保有者には選択肢がある。秘密鍵を自分で管理するか、取引所に委ねるかだ。
その選択を、歴史が繰り返す前に済ませておくことをお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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