ビットコイン手数料急騰で格差が生まれた|RBFと秘密鍵が決めた72時間
2021年の春から初夏にかけて、ビットコインの送金手数料が急騰した時期があった。メモリプールには未承認トランザクションが積み上がり、1件の送金に数千円の手数料がかかることも珍しくなかった。複数の取引所が出金処理の遅延を通知し、一部では出金を一時停止した。
あの72時間に、3人がいた。
2時間で通過した人
Aさんは自分のハードウォレットでビットコインを管理していた。急ぎの資金移動が必要になったとき、ウォレットの画面には「手数料を引き上げる」という選択肢があった。
RBF(Replace-By-Fee)と呼ばれる機能だ。まだマイナーに承認されていないトランザクションを、より高い手数料の新しいトランザクションで上書きする仕組みである。マイナーは報酬が高い方を優先して処理する。Aさんは渋滞の状況を確認し、手数料を引き上げた新しいトランザクションを送信した。2時間後、送金は完了した。
画面を見つめ続けた人
Bさんは大手取引所にビットコインを預けていた。同じ時刻、同じ緊急事態に直面した。出金申請を送ったものの、取引所から届くのは「現在処理に時間がかかっております」という通知だけだった。
取引所が保有するビットコインは、取引所のウォレットから送信される。実際の署名と手数料設定は取引所側が行い、ユーザーは送金先と金額を指定するだけだ。つまり、手数料を引き上げる権限はBさんの手にはない。待つしかなかった。
その72時間で市場は動いた。Bさんが意図していた取引の機会は、ただ画面を眺めている間に消えた。
再開後も続いた人
Cさんも取引所ユーザーだった。72時間後に出金制限が解除されたとき、Cさんは出金手続きを再開した。しかし取引所から追加の本人確認書類の提出を求められ、審査に数週間かかった。
ネットワーク自体の渋滞が解消されても、取引所の手続きが別の障壁として残った。Cさんがビットコインを受け取るまでに、当初の予定から1カ月以上ずれ込んだ。
3つの結末が示すもの
ビットコインのネットワーク自体は、72時間を通じて一度も止まっていない。止まっていたのは、取引所という中間層を経由する処理だった。
手数料急騰時に重要な問いは一つだ。「トランザクションの手数料を自分で変えられる状態にあるか」。
秘密鍵を持つ人は、RBFで手数料を引き上げることも、CPFP(Child-Pays-for-Parent)と呼ばれる別の手法でトランザクションを加速させることも選べる。より高い手数料を払う意思があれば、渋滞の中でも前に進める選択肢がある。取引所ユーザーにはそうした選択肢がない。取引所が設定した手数料レベル、取引所が判断したタイミングで処理が行われる。ユーザーができるのは、待つことだけだ。
渋滞は予告なく来る
手数料の急騰はいつでも起きうる。2021年の局面に限らず、Ordinalsが登場した2023年、Runesの取引が殺到した2024年の半減期後にも、メモリプールが短期間で溢れた。特定のイベントが重なるたびに同じ問いが生まれる。「あのとき自分は動けたか」。
RBFを使うために特別な技術は必要ない。秘密鍵を自分で管理するウォレットを用意し、送金時にRBFフラグを有効にするだけだ。SparrowやBitcoin Coreを含む主要なウォレットの多くは、RBFをデフォルトで有効にしている。
ただし、緊急時に初めて操作を試みることは避けたい。平時にテスト送金を行い、未承認トランザクションの手数料引き上げ操作を一度体験しておくことが、本番での冷静な行動につながる。
あの72時間、差がついた理由はシンプルだった。鍵を自分で持っていたかどうか。それだけだ。
今、あなたのビットコインはどちらの状態にあるだろうか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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