シードを半分に分けてはいけない|首都直下70%と2拠点保管

あなたのシードフレーズは、今どこに保管してあるだろうか。

政府の推計によれば、首都直下型地震の発生確率は30年以内に約70%だ。コインを持ち続けるつもりであれば、この数字は無視できない。東京の自宅1か所にシードを置いている場合、その確率でビットコインへの「永久アクセス不能」が現実になりうる。

倒壊で探しに行けなくなる。火災で紙が燃える。立入禁止区域に指定され、数か月から数年にわたって物理的に近づけない。最後のケースは特に見落とされやすい。建物が無事でも、区域指定だけで回収の手立てが完全に断たれる。

シードを「半分ずつ」に分けると壊滅する

ここで多くの人が陥る誤りがある。「東京と実家に分けて保管しよう」と考え、シードフレーズの前半12語を東京に、後半12語を別の場所に置くパターンだ。

これは安全策ではなく、リスクの倍増だ。

シードフレーズは、全語が揃って初めてウォレットを復元できる。24語のうち1語でも欠ければ復元は不可能になる。分割保管は「どちらか一方を失えば、全額が永久に失われる」状況を2か所で作り出しているに過ぎない。東京側の保管場所が無事でも、もう一方が失われた瞬間に終わる。

正しい設計はこうだ。完全なシードのコピーを、別々の都市に置く。

最小構成は「別都市」の2拠点

実用上の最小構成はシンプルだ。

  • 東京の自宅に完全なシード(1セット)
  • 東京以外の都市の実家、または信頼できる人の自宅に同じシード(1セット)

このとき、紙ではなく金属製のシードバックアップを選ぶべきだ。紙は火に弱く水に弱い。震災後の環境で「読める状態」を保てる保証がない。ステンレスや純チタン製のシードプレートは数百度の熱に耐え、物理的な衝撃にも強い。保管媒体の耐久性は、分散設計と同じくらい重要な要素だ。

「信頼できる人」という表現は、必ずしもシードの内容を知っている人物を意味しない。金属板として預かってもらうだけでよい。ただし、その人物が紛失したり第三者に渡したりするリスクは前提として考える必要がある。

そのリスクへの対応として、BIP-39パスフレーズの設定が有効だ。パスフレーズを設定しておけば、シードが物理的に他者の手に渡っても、パスフレーズなしではウォレットにアクセスできない。シードの保管場所とパスフレーズの管理を分離することで、預け先に求める信頼の水準を大幅に下げられる。

取引所にはこの選択肢がそもそもない

ここで重要な事実を確認しておく。取引所にBTCを預けている場合、シードフレーズは手元に存在しない。秘密鍵を管理していないということは、地理的分散という戦略そのものが最初から選択肢にないということだ。

震災時には、ネットワーク障害・規制対応・取引所自体のオペレーション停止が連鎖する。「取引所が無事なら大丈夫」という前提は、複数のリスクが重なる局面では崩れやすい。そのとき、秘密鍵を持たない保有者に取れる行動はない。BTCにアクセスできなければ、保有していても意味をなさない。

アルトコインについてはなおさらだ。秘密鍵の概念が曖昧なプロジェクトも多く、取引所以外の保管先が実質的に存在しないケースもある。地理的分散どころか、自己管理の入口にすら立てない構造だ。

「備えた感」が最も危険な状態

シードフレーズを1か所に保管し、「ハードウォレットを使っている」と満足している状態は、見た目には自己管理をしているように見える。しかし首都直下70%のシナリオでは、取引所に預けているのと結果として変わらない局面がある。アクセスできないBTCは、数字としては存在しても、実質的には消えたのと同じだ。

地理的分散の設計自体は単純だ。2拠点、別都市、金属プレート。実行が難しいのは、「やろうと思っていた」まま時間が経つことだ。次に実家に帰る機会があれば、金属プレートを1枚持参することから始めてほしい。それだけで、あなたのBTCの堅牢性は大きく変わる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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