通貨が1年で44%消えた日|政府判断と取引所BTCの二重リスク

2021年、トルコ国内で資産を持っていた人は、何もしていないのに1年間で資産価値の44%を失いました。

原因は戦争でも天災でもありません。政府の金融政策です。高インフレが続く局面で、トルコ政府は経済理論とは逆の利下げを繰り返しました。市場の信任が崩れ、通貨が暴落した。銀行残高の数字は変わっていません。しかし実際に買えるものは、1年前の半分近くになっていました。

こうした政府判断による通貨の毀損は、トルコだけの特殊事例ではありません。20世紀から21世紀にかけて、ジンバブエ、アルゼンチン、ベネズエラ、ギリシャ、キプロスと繰り返されてきました。そしてその都度、銀行や取引所は市民の出口を塞いできました。

通貨危機と出金規制は、ほぼ必ずセットで来る

見落とされがちな構造があります。通貨が崩壊する局面では、出金規制や取引所の停止が重なることが多いのです。

2015年のギリシャでは、銀行封鎖と同時に1日60ユーロという出金上限が設定されました。2002年のアルゼンチンでは、コラリートと呼ばれる資本規制が週250ペソの引き出し制限を課しました。2008年のアイスランドでは、通貨危機後に資本規制が9年間継続しました。

市民が「危険だ、逃げなければ」と気づいた瞬間に、逃げ道が閉じられる。これが通貨危機の構造です。政府には、その逃げ道を閉じる手段があります。銀行口座の凍結、出金制限、取引所への停止命令。歴史が繰り返し証明してきた事実です。

取引所にBTCを置いたままでは、二つのリスクを同時に抱える

ビットコインは通貨リスクに対する有効な手段になりえます。しかしそれは、自分で秘密鍵を管理している場合に限られます。

取引所にBTCを預けたままでは、通貨危機の最も重要な局面に二つのリスクが重なります。一つは通貨リスク。取引所は現地通貨建ての法的枠組みの中で動いており、規制当局の管轄下にあります。もう一つは封鎖リスク。金融混乱の局面では、取引所の銀行口座が凍結されたり、規制当局から出金停止命令が出たりする可能性があります。

「自分のBTC残高がある」という状態と「今すぐBTCを動かせる」という状態は、まったく別の話です。取引所が出金を停止した瞬間、あなたは残高を持ちながら、それを動かすことができなくなります。最も必要な瞬間に、何もできない。その構造を、取引所に預けたままということは意味しています。

秘密鍵を持つとはどういうことか

セルフカストディとは、ハードウェアウォレットでビットコインを保管し、秘密鍵を自分だけが管理する状態を作ることです。

秘密鍵を自分で持っている場合、どの政府が何を決定しても、BTCは自分だけが動かせます。銀行が閉まっても、取引所が停止しても、政府が資本規制を発動しても、秘密鍵の持ち主だけがBTCをコントロールできる。これは技術的な設計原理であり、誰かの善意や判断に依存しません。

2021年にトルコリラが44%下落した年、その局面で自分の秘密鍵を持っていた人には「動かす選択肢」がありました。取引所に預けたままの人には、規制が来た瞬間にその選択肢が消えるリスクがありました。政府が通貨を壊す瞬間こそ、鍵を持つ人と持たない人の差が最大になります。

準備は危機が来る前に

通貨危機は予告なく来ます。トルコの人々も、2020年末の時点で翌年に44%を失うとは思っていませんでした。

セルフカストディへの移行は、一度設定すれば維持コストがほぼゼロの行動です。正規販売店からハードウェアウォレットを入手し、シードフレーズを耐火性のある場所に保管し、復元テストを一度実施する。この手順を完了させておくだけで、政府の判断があなたのBTCに届かなくなります。

通貨危機が来てから秘密鍵を手に入れようとしても、その時点で取引所の出金が止まっている可能性があります。準備できる時間は、何も起きていない今だけです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします
← 記事一覧に戻る
LINE登録 ▶ セルフカストディの始め方を無料で学ぶ