2014年生まれの追跡インフラ|政府があなたのBTC12年分を見ている

あなたが初めてビットコインを取引所から送金したのは、いつだったでしょうか。

その送金記録は今も消えていません。ブロックチェーン上に刻まれたデータは、誰でもアクセスできる公開台帳として永続します。問題は、そのデータを「読める人間」の範囲が、2014年以降に大きく広がったことです。

チェーン分析企業が誕生した2014年

2014年、Chainalysisをはじめとするチェーン分析専門企業が設立されました。

これらの企業が行うのは、ビットコインの送金パターンを解析し、匿名アドレスの背後にある人物を特定することです。KYCで身元が判明しているアドレスを起点に、資金の流れをネットワーク上でたどっていきます。現在では米国DEA、FBI、IRSなど複数の政府機関が、これらの企業と長期契約を結んでいます。

重要なのは、彼らの解析が過去のデータにさかのぼって適用されるという点です。2014年以前のトランザクションも含め、ブロックチェーン上のすべての記録が分析対象となります。

12年分の記録が意味するもの

2026年現在、2014年からの記録は12年分に及びます。

その間に取引所からビットコインを出金したことがある人は、少なくとも一つのKYC起点アドレスを持っています。チェーン分析では、そのアドレスから連鎖的に追えるすべての送金先が、同一人物の資産として記録されていきます。

一度取引所と紐付いたアドレスから資金を受け取ったアドレスも、同様の調査対象になり得ます。直接取引をしていない相手とのやり取りさえ、あなたの履歴に巻き込まれる構造です。

この12年間、普通に使ってきたビットコインの送受金が、すでに誰かのデータベースに存在している可能性は、決して低くありません。

凍結は理論ではなく実際に起きた

2022年2月のカナダが、その証拠です。

政府は緊急措置法を発動し、トラック運転手による抗議運動に関連するビットコインアドレスをチェーン分析で特定しました。取引所に凍結命令を出し、追跡から凍結実行まで数時間で完了しました。

取引所に預けていたビットコインは、ユーザーの意思に関係なく動きを止められました。事前通知はなく、異議申し立ての機会は凍結の後でした。

チェーン分析が「政府が実際に使う行政インフラ」であることを、この出来事は証明しました。民主主義国家であっても、追跡技術と取引所の組み合わせが機能した瞬間です。

CoinJoinが持つ意味と、使えない人の現実

チェーン分析への技術的な対抗手段として、CoinJoinがあります。

複数ユーザーのビットコインを一つのトランザクションに混合することで、「誰がどこへ送ったか」という因果関係を曖昧にする技術です。適切に実行されたCoinJoinは、現在のチェーン分析アルゴリズムが最も解析を苦手とする状況を作り出します。

しかし、CoinJoinを実行するには秘密鍵が必要です。

取引所に預けているビットコインには、自分の秘密鍵がありません。CoinJoin対応ウォレットを使おうとしても、署名できるのは秘密鍵を持つ取引所だけです。「追跡を断ち切りたい」と思っても、そのための署名権限が手元にないのです。

過去は変えられない。これからの履歴は変えられる

2014年から積み上がった送金履歴は、今から消すことはできません。すでにブロックチェーンに刻まれたトランザクションは永続します。

しかし、これから行う送金については、まだ選択肢があります。秘密鍵を自分で管理し、CoinJoin対応ウォレットを使えば、少なくとも今後の送金を追跡の連鎖から切り離すことができます。

取引所にビットコインを置き続けることは、その選択肢を手放し続けることと同じです。

12年分の記録の後に続く履歴を誰がコントロールするか——その答えは、秘密鍵が今どこにあるかで決まります。まず秘密鍵を自分の手に取り戻すことから始めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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