FBI800箱没収が暴いた3つの誤算|貸金庫シードの盲点

貸金庫にシードフレーズを入れていますか。「銀行の金庫なら安全だ」と考えてそうしているなら、2021年にロサンゼルスで起きた出来事を知っておくべきです。

2021年、米FBIはロサンゼルスの貴金属保管業者「US Private Vaults」に捜索令状を執行し、約800人分の貸金庫を強制開錠しました。対象となった顧客の多くは、マネーロンダリングや麻薬取引とは無関係の一般市民でした。それでも中身はすべて没収されました。現金、金地金、貴金属、個人の重要書類に至るまで。取り戻すためには、顧客自らが連邦裁判所に訴訟を起こすしかありませんでした。

この事件を「アメリカで起きた特殊なケース」として片付けることは、3つの意味で誤りです。

誤算①「業者が悪いのであって、自分には関係ない」

FBIが令状を執行した対象は業者でした。しかし実際に財産を没収されたのは、その業者に貸金庫を借りていた一般顧客です。業者の違法行為を知らなかった顧客も、例外ではありませんでした。

「預け先がクリーンであれば問題ない」という考えは、この事件では通用しませんでした。令状の前では、誰の財産かではなく、どこにあるかが問われます。シードフレーズが入った封筒も、その場所に置かれている以上、没収の対象になりえます。あなた自身が無実であることと、あなたの資産が保護されることは、別の問題なのです。

誤算②「日本では絶対に起きない」

2021年の事件はアメリカで起きましたが、日本の法体系も当局に同様の権限を与えています。国税徴収法は、税務調査の過程において貸金庫を開錠させる権限を明示的に認めています。申告漏れが疑われた場合、差押え令状はシードフレーズの入った箱にも届きます。

「日本の銀行はそんなことはしない」という感覚は、法律上の根拠ではなく、これまでの慣行への期待に過ぎません。当局が権限を行使すると判断した場合、銀行側はそれを拒否する立場にはありません。銀行は顧客の利益を守る前に、監督官庁の指示に従う義務を負う機関です。

誤算③「銀行の金庫はあなたの管理下にある」

銀行は国家が免許を与え、規制し、監督する機関です。その構造上、銀行と国家は利害を共有する側に立っています。ビットコインをハードウォレットで自己管理し、シードを貸金庫に入れたとしても、その金庫を最終的に開けることができるのは銀行です。そして銀行は、令状があれば開けます。

シードフレーズを銀行に預けることは、ビットコインへのアクセス手段を、銀行——そして国家——の手が届く場所に置くことです。「誰も見ていない封筒に入れて預けている」としても、物理的な管理権はあなたの手にはありません。

セルフカストディが「完成」する条件

ハードウォレットを購入し、自分でシードを生成し、取引所からビットコインを引き出した。ここまでやった人は多いと思います。しかしシードを銀行の貸金庫に預けた時点で、その完成が崩れます。

セルフカストディとは、秘密鍵(シードフレーズ)も含めて自分の手の届く範囲で管理する状態を指します。第三者が施錠・開錠の権限を持つ場所にシードを置くことは、管理権を一部放棄することになります。

真の自己管理のためには、シードを耐熱・耐水の金属プレートに刻印し、地理的に離れた複数の拠点に分散させ、当人以外が容易に発見・解読できない設計にすることが求められます。利便性は下がりますが、それがビットコインの設計原理に忠実な保管の形です。

貸金庫は「頑丈に見える選択肢」ですが、頑丈さと自己管理は異なります。あなたのシードが今どこにあるか、一度見直してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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