引き出せても翌日には消えていた|790億%インフレの二重の罠

あなたが取引所に預けているビットコインを、今すぐ引き出せると確信していますか。

2008年のジンバブエで起きたことを振り返ると、この問いの重みが変わる。月次インフレ率が約790億%に達したとき、多くの預金者は「いざとなれば引き出せる」と思っていた。口座の残高は確かに存在していた。数字は通帳にきちんと刻まれていた。だが銀行は出金制限を実施し、窓口には長蛇の列ができた。

問題は「引き出せない」という一点だけではなかった。仮に制限をくぐり抜けて引き出せたとしても、翌日には購買力がほぼゼロになっていた。毎日、時間単位で価値が消えていく状況では、「アクセスできるかどうか」という問題と「アクセスできたとして価値が残るかどうか」という問題は、まったく別に存在した。二つの壁が同時に人々を締め上げていた。この構造は、単なる「銀行が倒産した」という話とは本質的に異なる。

政府が発行した100兆ジンバブエドル紙幣は、その象徴だ。米ドル換算で数十セント程度の価値しかない。億を超える数字が印刷された紙幣が、スーパーの棚から日用品をほとんど買えなかった。銀行を信じ続けた人の資産は、通帳の記録だけを残して消えた。危機を乗り越えた人々に共通するのは一点だった。外貨や金など、第三者の許可なしにアクセスできる資産を手元に持っていたことだ。

取引所BTCに潜む同じ二重の構造

取引所に預けたビットコインには、この二重の構造が同じ形で潜んでいる。

秘密鍵が自分の手にない場合、取引所が出金を止めれば動かせない。これが第一の壁だ。日本の法律は取引所に分別管理義務を課しており、預けた資産は法律上あなたのものだ。しかし、法律上の権利が「いつでも動かせる」ことを保証するわけではない。管理権が取引所の手にある限り、引き出しの最終的な判断権は取引所にある。

そして第二の壁がある。市場危機や取引所の経営問題が起きたとき、出金処理は遅延し、本当に必要な瞬間に動けなくなることがある。価格が急変するなかで「処理中」のまま何時間も待ち続けることの意味を、ジンバブエの人々はすでに経験した側から知っている。

出金制限は、悪意ある業者によってのみ引き起こされるわけではない。規制当局からの行政命令、サイバー攻撃への緊急対応、システム障害、資金繰りの悪化。どれも表向きは正当な理由であり、出金を一時停止する根拠になりうる。2008年のジンバブエの銀行も、違法なことをしていたわけではなかった。システム全体が崩壊し、その煽りを預金者が受けた。構造は同じだ。

セルフカストディが両方の壁を消す

セルフカストディがこの問題に答える理由は、シンプルだ。

秘密鍵を自分が管理していれば、取引所の判断に左右されることなく送金できる。第一の壁は存在しない。そして自分でいつでも動けるということは、タイミングを自分で選べるということでもある。危機が来る前に動くことも、危機のさなかで即座に動くことも、自分の判断に委ねられる。

2008年のジンバブエで資産を守った人々が持っていたのは、「自分でアクセスできる資産」だった。外貨、金、食料品の現物。いずれも、第三者の許可を必要とせずに使えるものだ。ビットコインのセルフカストディは、デジタル時代における「自分の手で持つ」という選択に相当する。

ジンバブエの預金者の多くは、「まだ大丈夫」と思いながら行動できない日が続いた。窓口が実際に閉まったとき、動ける選択肢はすでになかった。取引所のビットコインも、何も起きていない今こそが動ける窓口だ。まず少額のテスト送金から始め、自分で管理する仕組みを今のうちに整えておくことが、備えの最初の一歩になる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします
← 記事一覧に戻る
LINE登録 ▶ セルフカストディの始め方を無料で学ぶ