3年積立で9万円が消える|楽天BTC積立スプレッドの実態
月5万円のビットコイン積立を、3年続けたとする。投資総額は180万円。毎月画面を確認しながら積み上げてきた金額だ。だがその数字を改めて計算し直すと、最初から9万円がすでに消えていた可能性がある。
楽天ウォレットは「手数料無料」を前面に打ち出している。この表現は、売買にかかる取引手数料という名目の費用が発生しないという意味では正確だ。しかし買値と売値の差、いわゆるスプレッドは別の話になる。楽天ウォレットのスプレッドはおよそ3〜5%に設定されており、これが実質的なコストになっている。
1万円を買った瞬間に何が起きるか
スプレッドが5%の場合、1万円分のビットコインを購入した瞬間に500円が消える。現金に例えるなら、1万円を出して9,500円分の価値しか手元に残らない状態だ。購入直後から、価格が5%以上上昇しなければ、すでにマイナスからスタートしていることになる。
この構造が見えにくいのは、「手数料」という名称が使われていないためだ。取引画面に「手数料0円」と表示されていても、買値と売値の差は購入のたびに静かに積み上がっていく。月5万円の積立でスプレッドが5%なら、毎回2,500円が消える計算になる。1年で3万円、3年では9万円だ。
180万円を積み立てて、最初から9万円がすでに消えている。ビットコインの価格が大きく上昇すればその分は相殺されるが、価格が横ばいや下落であれば、スプレッドコストだけが確定的に積み上がり続ける。
手数料ゼロ表示が隠す構造
取引所形式(板取引)と販売所形式(相対取引)では、コスト構造が根本的に異なる。板取引では購入者と売却者の注文がシステム上で直接マッチングされ、スプレッドは市場の需給で自然に決まる幅になるため、販売所と比べてはるかに小さいケースが多い。
一方、楽天ウォレットのような販売所形式では、業者が買値と売値を自ら設定する。スプレッドという形でコストを価格に内包しているため、「手数料ゼロ」は名目上正確でも、実質的なコストはゼロではない。3〜5%という数字は積立金額が大きくなるほど、期間が長くなるほど、見えない負担として積み重なっていく。
高いコストを払って何が残るか
販売所形式の積立は、購入を自動化しやすく少額から始められる点では使い勝手がよい。しかし高いコストを支払いながら、実際に手元に何が残るかを考えると、別の問題が浮かび上がる。
楽天ウォレットを含む取引所・販売所に預けたままのビットコインは、秘密鍵を自分で持つことができない。秘密鍵とは、ビットコインを動かすための唯一の証明だ。この鍵を自分で管理していなければ、プラットフォームに出金制限や経営上のトラブルが発生したとき、資産を引き出せなくなるリスクが残る。
「残高が画面に表示されている」ことと「必要なときに引き出せる」こととは、本来別の話だ。国内外の取引所でこれまで出金停止や破綻が起きた事例は複数あり、その都度、預けていたユーザーが対応に苦慮した経緯がある。
スプレッドを払い続けながら鍵も持てない
スプレッドという形で購入のたびにコストを支払い、それでいて秘密鍵の管理権は手元にない。この二重の構造が、販売所積立の本質的な問題だ。コストが高く、管理権も薄い。この組み合わせは、長期保有を考えるうえで正面から向き合う必要がある。
コストを抑えながら管理権も自分に置くためには、板取引のある取引所で購入したうえで、ハードウェアウォレットに移す方法が現実的な選択肢になる。初期設定や送金操作に慣れが必要なぶん手間はかかる。それでも月5万円・3年という規模の積立であれば、スプレッドの差だけで数万円単位の違いが生まれる可能性がある。
「手数料ゼロ」という表示は、選択肢を比較するきっかけにはなっても、そのまま選ぶ理由にはならない。実際のコスト構造を数字で確認してから、どこで購入するかを判断することが、長期積立の本当の出発点になる。
秘密鍵を自分で持つ。その一歩を先延ばしにするほど、コストと管理リスクが静かに積み上がっていく。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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