採掘者が取り戻した選択権、取引所BTCが届かない3つの壁

ビットコインを取引所に預けたまま、「採掘プロトコルが進化しているから大丈夫だ」と感じていませんか。

2014年、GHash.ioという採掘プールがビットコインネットワーク全体のハッシュレートの51%を超えた。この事件が可視化したのは、ブロックの「中身を決める権限」がどこに集中しているかという問題だった。当時のStratum V1プロトコルでは、採掘プールがブロックテンプレートを一元的に作成し、個々の採掘者はその設定に従って計算するだけだった。51%の計算力を握った主体は、特定の送金を後回しにしたり、事実上排除したりできる立場にあった。

このとき多くのビットコイン保有者が、自分のBTCが「プールの判断」に晒されていることに初めて気づいた。

Stratum V2が採掘者に返したもの

この構造的な問題を修正するために設計されたのが、Stratum V2だ。V2では採掘者自身がどのトランザクションをブロックに含めるかを選択できるようになった。各採掘者が独立してブロックを構成するため、1つのプールが全体を代表して検閲するという仕組みが成立しにくくなる。

採掘者に実質的な選択権が返ったという意味で、これはビットコインの分散性を強化する一歩だ。2014年の問題への、プロトコル的な回答と言える。

しかし取引所BTC保有者は恩恵の圏外にいる

V2の恩恵が届くのは、自分で署名してトランザクションをネットワークに送り出せる人に限られる。

取引所にBTCを預けている場合、あなたが出金リクエストを出しても、実際に秘密鍵で署名するのは取引所のシステムだ。採掘プールがV2でどれだけ自由にブロックを構成していても、まず取引所があなたの送金を署名してくれなければ、取引はネットワークに届かない。V2はプール層での検閲リスクを下げたが、その上流にある取引所層には何も作用しない。

取引所BTC保有者がV2の時代に直面する3つの壁

第一の壁は、署名権の不在だ。 秘密鍵が取引所の管理下にある以上、送金を開始する権限は取引所が握っている。取引所がシステム障害を起こしても、出金制限を設けても、あなたのBTCはネットワークに届く前の段階で止まる。ブロックを誰が構成するかより前に、あなたの取引が発行されるかどうかが問題になる。

第二の壁は、外部命令への服従だ。 金融当局が特定の出金を停止するよう取引所に命じた場合、取引所は法令に従う。そのとき、ビットコインネットワーク自体は正常に動き続けていても、あなたのBTCは出口に辿り着けない。規制命令は採掘プロトコルより先に作動する。

第三の壁は、破綻時の手続きだ。 取引所が経営破綻した場合、資産の返還は法的手続きを経る必要がある。日本の資金決済法では分別管理が義務付けられているが、手続きが完了するまでBTCは凍結され、その間は動かせない。過去の事例では、返還までに数か月から数年を要したケースも存在する。

3つはいずれも、採掘プールとは無関係に発生するリスクだ。V2がどれだけプール層を改善しても、これらは変わらず存在し続ける。

選択権を取り戻す一歩

Stratum V2が採掘者にブロック構成の選択権を返したように、セルフカストディはBTC保有者に署名権を返す。

まず小さく始めるなら、取引所に置いているBTCの一部をハードウォレットに移してみることだ。移送を自分で実行したとき、あなたは秘密鍵で署名し、取引をネットワークに直接送り出したことになる。その体験が、「管理権とは何か」を言葉でなく感覚で理解させてくれる。

採掘者はV2で選択権を取り戻した。あなたのBTCの選択権は、まだあなた自身の手にありますか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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