合法的に消えた財産|ベネズエラ2018とBTCセルフカストディ

2018年8月20日の朝、ベネズエラのある家族は銀行口座に1,000万ボリバルを持っていました。老後のために、子どもの教育のために、長年かけて積み上げた貯蓄です。

その日、口座の残高は100ボリバルになっていました。

盗まれたわけではありません。ハッカーの仕業でもありません。政府が発令1枚でゼロを5つ消しました。それだけのことです。

合法だからこそ、抵抗する手段がなかった

ベネズエラ政府によるリデノミネーションは、すべて法律の範囲内で実施されました。旧ボリバル10万枚を新ボリバル1枚に強制換算する政府の命令によって、口座の数字が一夜で10万分の1に書き換えられました。

盗難なら警察に届け出られます。詐欺なら裁判に持ち込めます。しかし政府が法律を使って通貨を書き換えたとき、預金者には打つ手がありませんでした。国家が正しい手続きを踏んだ以上、異議を申し立てる制度的な入口すら存在しません。

IMFが推計したその年のインフレ率は約100万%です。ゼロを消すことで問題は「解決」されたように見えましたが、新通貨も同じ運命を辿りました。コツコツ貯め続けた人ほど、失ったものが大きかったのです。

合法的な財産消去の構造は繰り返される

この「合法的な財産の消去」は、ベネズエラだけの話ではありません。

2013年のキプロス預金封鎖、1946年の日本の新円切替、2001年のアルゼンチン金融危機。いずれも政府または法的に認められた手続きを通じて、預金者の資産が制限・削減されました。法律が資産を守る側ではなく、資産を削る側の道具として機能した事例です。

共通するのは「合法性」です。だからこそ被害を受けた側には、法的な救済手段がありません。

取引所のBTCも「許可」によって存在している

取引所に預けたビットコインは、あなたの資産として画面に表示されています。しかしその数字は、取引所があなたに「引き出してよい」と許可している額です。

利用規約には出金制限の条項が明記されています。規制当局から命令があれば凍結されます。経営が破綻すれば破産手続きに従うことになります。これらはすべて合法的なプロセスです。

2022年のFTX崩壊では、利用規約に同意してBTCを預けていたユーザーが、何ヶ月にもわたって引き出せない状態に置かれました。誰も違法行為をしていませんでした。システムが正しく機能した結果として、アクセスできなくなったのです。

日本の資金決済法は分別管理を義務づけていますが、分別管理は「いつでも引き出せること」を保証しません。2024年のDMM Bitcoin事件では、482億円が流出した後に出金停止が続きました。法制度が整備されていても、引き出せない局面は存在します。

秘密鍵は誰の許可も必要としない

セルフカストディで管理するBTCは、誰かの許可によって存在しているわけではありません。

Bitcoinネットワークの数学的なルールに従い、あなたの秘密鍵から導出されたアドレスにUTXOが紐づいています。政府は通貨を発令できます。取引所は利用規約を変更できます。しかし、256ビットの暗号によって保護された秘密鍵を持つ者だけがそのBTCを動かせます。命令書1枚では、数学は書き換えられません。

2018年8月20日の朝、ベネズエラで残高が変わらなかったのは、セルフカストディでBTCを保有していた人だけでした。

準備できるのは「発令の前」だけ

ベネズエラの預金者には、政府の発令後に動く時間がありませんでした。2018年8月20日より前に、すでに手を打っておいた人だけが守られました。

取引所のBTCをセルフカストディに移す作業は、今日から始められます。ハードウォレットを用意し、シードフレーズを安全な媒体に記録し、小額で送金テストを実施します。週末の数時間で完了できる作業です。

「法律が守ってくれる」という前提は、ベネズエラの預金者も持っていました。その信頼が合法的に裏切られた日、手元に秘密鍵を持っていた人だけが、翌朝も同じ残高を確認できました。

秘密鍵を自分の手元に移す準備を、今日始めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

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