送金も受取も止まった72時間|取引所停止が生んだ3つの結末
2021年5月の第二週、ビットコインの価格が数日間で40%以上下落した。その週末、取引所アプリを開いたとき、あなたの画面にはどんな表示が出ていただろうか。
大規模な価格変動と同時に、複数の国内外取引所でアクセス障害が相次いだ。ログインに成功しても、送金ボタンを押すと「処理中」の表示のまま動かなくなる。オンチェーンのメモプールには数万件の未承認トランザクションが積み上がり、手数料の安い取引は何時間待っても承認されない状態が続いた。
あの72時間で、3人のビットコイン保有者の結末がはっきりと分かれた。
1人目:手数料を引き上げて数時間で突破した
ハードウォレットで自分のビットコインを管理していた人は、メモプールが混雑し始めたことをすぐに確認した。ウォレットの画面で現在の推奨手数料を確認し、自分の送金が後回しにされていると判断した。
彼が使ったのはRBF(Replace-By-Fee)という仕組みだ。まだ承認されていない送金を、より高い手数料を設定した新しいトランザクションに差し替えて再送できる機能で、秘密鍵を自分で持っている者だけが実行できる。手数料を引き上げた送金は数時間後にマイナーに選ばれ、承認された。混雑の中を、適切な対価を払って通過したのだ。
2人目:サポートフォームを送信して72時間が過ぎた
取引所でビットコインを保有している場合、秘密鍵は取引所が管理している。送金の手数料をいくらにするか、処理をどのタイミングで実行するか、混雑時にキャンセルして再送するか。これらすべての判断は取引所の裁量に委ねられ、個別の顧客が操作できる余地はない。
この人物がとれた行動は一つだけだった。サポートページからお問い合わせフォームを送信し、返信を待つことだ。「手数料を引き上げてください」と書いても「早く処理してください」と書いても、システムが一括処理している取引の優先度を個別に変えることはできない。
72時間後、送金はようやく承認された。待ち続けることが、唯一の手段だった。
3人目:期限が過ぎて機会が消えた
事業上の取引で、特定のタイミング内にビットコインを受け取る必要があった人がいた。相手方も取引所にビットコインを預けていた。取引所の出金処理が詰まり、送金そのものが開始できない。
受け取る側にできることは何もなかった。相手方がサポートに連絡しているのを知りながら、ただ画面を見て待つ。期限を延ばすよう交渉できても、取引所の処理能力を増やすことはできない。取引の期限は過ぎ、機会は消えた。その損失は、いくら問い合わせを送っても取引所から補填されない。
「受け取る側に非はない」は正論だが、正論では機会は戻らない。
「残高がある」と「動かせる」は別のことだ
この3人の結末を分けたのは、ビットコインへの知識の深さでも、投資経験の長さでもない。秘密鍵を自分で持っているかどうか、その一点だけだ。
取引所に預けている状態では、手数料の設定権も、送金タイミングの選択権も、キャンセルと再送の実行権も、すべて取引所が握っている。市場が大きく動くとき、送金の緊急度は最も高まる。しかし同じタイミングに、取引所のシステムはアクセス集中で負荷が高まり、サポートには問い合わせが殺到する。個別対応は後回しになる構造だ。
これは取引所の悪意の問題ではない。秘密鍵を持たない者には、送金に関するレバーが構造的に存在しないというだけのことだ。送金だけではない。受け取りも同じだ。相手方が取引所に預けている限り、あなたが受け取るタイミングも相手の取引所のシステム状況に依存する。
次の72時間が来る前に
セルフカストディへの移行は、一度始めれば難しくはない。ハードウォレットを購入し、初期設定でシードフレーズを紙に書き留め、安全な場所に保管する。その後、取引所から少額を出金して手元のウォレットで受け取れることを確認する。
この手順を完了すれば、次にメモプールが混雑したとき、あなたは手数料を自分で設定し、必要であればRBFで差し替えることができる。取引所のサポートフォームを探す前に、状況に応じて行動できる立場に立てる。
2021年5月のような局面は、周期的にやってくる。そのとき1人目になるか、2人目になるか、3人目になるかは、今日の行動で決まる。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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