Infura停止1回でDeFiが消えた日|分散型という名の中央集権

「分散型だから銀行より安全だ」と信じていたとしたら、2020年11月11日のことを知っておく必要がある。

その日、MetaMaskを開いたユーザーは画面が固まったまま動かない状況に直面した。Uniswap、Compound、Aaveをはじめとする数百のDeFiサービスが同時に止まった。ハッキングではない。スマートコントラクトのバグでもない。原因はたった1社、Infuraのサーバー障害だった。

「誰も止められない」はずが、1社で全滅した

Infuraは、Ethereumノードへのアクセスを提供するインフラ企業だ。多くのDeFiプロジェクトやウォレットは、自前でノードを運用せず、Infuraのエンドポイントを経由してブロックチェーンと通信している。

そのInfuraは、AWSの上で動いている。

AWSとは、Amazon Web Servicesのことだ。世界のクラウドインフラの大部分を支える米国の中央集権的なサービスである。Infuraのサーバーが落ちれば、それに依存するすべてのサービスが止まる。「誰も止められない」と宣伝されていたDeFiが、1社のインフラ障害で一斉に機能を失った。これは銀行のシステム障害と構造的にまったく同じだ。

ブロックチェーンは動いていた

重要な事実がある。2020年11月のその日、Ethereumのブロックチェーン自体は正常に稼働していた。

しかしユーザーからは届かなかった。なぜなら、ほとんどのユーザーはブロックチェーンに直接接続していないからだ。MetaMaskのデフォルト設定はInfuraを中継する。自前ノードを持たないDeFiプロトコルはInfuraを通じて動く。ブロックチェーンが動いていても、中央集権的なアクセス経路が止まれば、ユーザーには「消えた」と同義になる。

「分散型」という言葉は、プロジェクトのホワイトペーパーや宣伝文句の中に存在する。実際のインフラ構成図には、AWSとInfuraという固有名詞が記されている。

アルトコイン投資に潜む二重の罠

アルトコインを取引所に預けている人は、すでにひとつのリスクを抱えている。取引所が止まれば引き出せなくなる、あのリスクだ。

しかしプロトコル自体が中央集権インフラの上に乗っているとしたら、リスクはそこに止まらない。たとえ取引所に問題がなくても、プロトコルが機能しなければトークンの価値は崩壊する。取引所リスクと、プロトコルの中央集権リスク。アルトコイン保有者はこの二重の構造を同時に引き受けている。

「分散型」という言葉はその構造を覆い隠す看板に過ぎない。実態を確認せずに信じることは、「銀行は安全だ」と信じ込むのと変わらない。

ビットコインが違う理由

ビットコインのノードは現在、世界中に約2万台が独立して稼働している。それぞれが独自にブロックチェーンの全データを検証し、相互に通信している。

1社のサーバーが落ちても、1国がノードを禁止しても、ビットコインネットワークは動き続ける。2021年に中国がマイニングを全面禁止したとき、ハッシュレートは一時的に落ちたが、ビットコイン自体が止まることはなかった。これはInfura障害でDeFiが全滅した構造とは根本的に異なる。

「分散型」を名乗るための条件は、スマートコントラクトを持つことでも、ガバナンストークンを発行することでもない。中央集権的な単一障害点をどこにも作らないことだ。ビットコインはその条件を満たし、他のほぼすべてのプロジェクトは満たしていない。

管理権は手元にあるか

Infura障害が示したのは技術的な事実だけではない。「どこかの誰かが動かしてくれているから大丈夫」という依存の構造が、いかに脆いかということだ。

銀行に預けたお金は銀行が管理する。InfuraのAPIを経由するDeFiはInfuraが管理する。取引所に置いたビットコインは取引所が管理する。秘密鍵を自分で管理しているビットコインだけが、その構造から外れている。

AWSが落ちても、InfuraがシャットダウンしてもMetaMaskが動かなくなっても、自分の秘密鍵が手元にある限り、ビットコインは自分のものとして存在し続ける。今日、あなたのビットコインがどこにあるかを確認してほしい。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします
← 記事一覧に戻る
LINE登録 ▶ セルフカストディの始め方を無料で学ぶ